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バイデン大統領はケンタッキー州の被災地を訪れ住民たちを励ました EVELYN HOCKSTEIN-REUTERS

道路側の大きな窓から見ると、懐中電灯を手にした近所の人たちが自宅の被害を点検していた。外に出る勇気はなかったけれど、私たちも庭に出て壁沿いに歩いた。

前庭では、切れた送電線がうねっていた。裏の勝手口に回り、懐中電灯で辺りを照らすと、真っ二つに折れた電柱が見えた。変圧器が今にも落ちそうな状態で引っ掛かっている。

切れた送電線が揺れ、地上でとぐろを巻いていた。危なくて、近づけない。これでは別棟のガレージにもたどり着けない。

でも私たちは生きている。2人とも無事。

それから2時間以上、私たちは電話やメールのやりとりに追われた。町の知り合いのほとんどと連絡が取れた。

消防士と結婚した友人によると、全ての救急隊員が緊急招集され、捜索・救援に当たっていた。警察官もそう。助けを必要とする人を見つける。そして遺体も。

私たちは午前4時頃ベッドに戻り、30分ほどで眠りに落ちた。でも6時30分には携帯電話が再び鳴り始めた。メールの着信音もひっきりなし。今度は町の外に住む友人たちからだった。

そうだ、母の家を見に行かなければ。母の家は町の外にあるから、たぶん無事だろうが、やはりこの目で確かめたい。でも車を出せない。

そこへ、同じ郡に住む友人が車で駆け付けてくれた。

私が助手席に乗り込むと、彼女は言った。「辺りの様子、知ってる?」

辺り一帯は、想像を絶する光景だった。まるで空爆されたかのよう。倒木と折れた枝が路面を覆う。落下物や残骸の間を縫って車は進む。うちから5軒目の友人宅では屋根に木が突き刺さっていた。

その先の状況はもっとひどい。道路沿いは壊滅状態だ。倒木で真っ二つになった家。つぶれた物置小屋や車庫。どこから飛んできたのか、逆さまのトランポリンもある。

どこの庭にも黒い屋根板が散らばっている。一時停止の標識が路上に倒れている。こんな惨状はテレビで見るものと思っていたが、今は私たちの町がニュースになっている。

見る影もない街並み

あるブロックは完全に破壊されていた。この一帯は1950年代にできた住宅地。どの家の庭にもハナミズキや梨の木があって、春になると街はピンクや白い花の色に染まる。秋には樫の木が燃え立つように紅葉する。

なのに今は一本の木も立っていない。見る影もない。

瓦礫で道路が塞がれているので、迂回して数ブロック進む。街路の半分は通行不可能で、何度も逆戻りしなければならなかった。

私は聞き返した。何が起きたか、本当に知らないんですか?
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