── カレンさんの世界観を本にするために、いろいろと工夫をされたのだと想像します。

「既存のルールはあえて取り払おう」と決めて制作しました。「正確においしくつくれること」を追求するなら、当然、材料の分量は「大さじ1杯」などときっちり書いたほうがいいでしょう。

でもこの本では、あえてそうした情報は省きました。カレンさんの物語に集中してもらうために。

また本をつくるときは、プロの校正さんにお願いして、正しい日本語に整えるのが一般的です。でもそれも最低限にし、カレンさんの物語をできる限りそのまま残しました。

── 読者からは、どのような反響がありましたか?

この本のターゲットとして想定していたのは、料理をしたことがない人や、はじめて一人暮らしをする人。ですが結果的には、老若男女、幅広い層の方が手に取ってくださったようです。

料理のベテランであろう主婦の方からの「料理を作るのは本来楽しいのだということを思い出させてもらいました。」というコメントに、胸が熱くなりました。

「ターゲット:全員」という本は、狙ってつくれるものではありません。たくさんの方に手に取ってもらえて本当にうれしかったですし、カレンさんも驚いていらっしゃいました。

とにかく「わからないこと」に自信があるんです

── 大川さんが編集者になった経緯をお聞かせいただけますか。

実は、はじめは編集者になりたかったというより、サンクチュアリ出版に入りたかったんです。私が所属しているサンクチュアリ出版は、「本を読まない人のための出版社」をスローガンに、発行点数を年間12冊に絞って、丁寧な本作りを徹底している個性的な会社です。そんなサンクチュアリ出版の本を読んだことが、編集者になるきっかけでした。

── 「編集者になりたい」ではなく「サンクチュアリ出版に入社したい」という志望動機だったんですね。きっかけになったのは、なんという本ですか?

『毎日が冒険』(高橋歩)です。この本が、北海道の田舎で暮らしていた高校生の私には、とにかく刺激的で......。当時、上京の背中を押してくれたのもサンクチュアリ出版の本でした。本の出会いひとつで人生は変わるというのをリアルに感じて、それが衝撃で。自分もサンクチュアリ出版の本作りに携わってみたいと思いました。あとは直感的に、「もしこの会社に入れたらおもしろい人生になる気がする」と思ったのもあります(笑)。

── 運命の出会いだったんですね! 編集者になる前、広報を担当されていた時期もあったとうかがいました。

編集アシスタントとして入社し、途中から広報を兼任させていただきました。

書籍編集者がどんな仕事かもわからないまま入社したんですが、サンクチュアリの本づくりを目の前で見ているうちに「書籍づくりってすごい」「自分もやってみたい」と考えるようになり、正式に編集部所属になりました。

何かをはじめる入り口になる本
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