どんなことがあっても「それでも人生は続く」というメッセージを込めたリード曲「Life Goes On」は、耳なじみが良くありながらもエレクトロポップやヒップホップを難なく融合させており、シンプルかつエモーショナルなアルバムの幕開けになっている。

さらに日常の中の小さな幸せを見つける大切さをゴスペル調で歌うネオソウル「Fly To My Room」、憂鬱や不安で気分が落ち込み、「ただもう少し幸せになりたいだけなんだ」「大丈夫だなんて言わないで、大丈夫ではないから」と吐露するVが作詞作曲したバラード「Blue & Grey」と、落ち着いた表情の楽曲が続く。

「Skit」では「Dynamite」がビルボードチャート「ホット100」1位になった瞬間の会話が録音されており、「僕は死ぬまで音楽をやろうと思う」と冗談交じりに言うSUGAの音楽に対する姿勢に胸を打たれる。軽快なレトロファンク「Telepathy」には、離れていてもファンとは常に一緒だというメッセージが込められている。

オールドスクールなヒップホップで原点に回帰しながら最先端の爽やかなファンクを融合した「Dis-ease」では、止まることを恐れてしまう心境をJ-HOPEが「職業病」と表現。「Stay」は、大型フェスで楽しみたいような壮大なフューチャーハウスに「つながり」というテーマを載せたもの。そして最後に、人生を祝福するような甘く弾けるサウンドの「Dynamite」へとつながる。

苦しみや葛藤と向き合い、安心や癒やしを取り戻して心身を解放した上で、明るい世界へと導いてくれるのだ。

不安や孤独、喜びや祝福、複雑に入り込む人間的な感情を色鮮やかに描いた今作。どんなことがあっても、ただそこに存在すること、つまり「Be Yourself」、それだけで十分なのだと語りかけてくれる、まさに2020年に最も必要とされていたものが詰まったアルバムになっている。

(筆者はアメリカ在住。音楽レーベルのコンサルティングやアーティストのエージェントのほか、「Z世代とカルチャー」を主に扱うライターとして活動)

<2020年12月1日号「BTSが変えた世界」特集より>

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