ドイツでは対照的に、学校は午前中だけ。午後は時間が空くので、幼い頃から自由時間の使い方を考える習慣ができる。自ずと時間に対する意識が高まり、それが社会人になってからの働き方にもつながっていく。

「タスク型」雇用の時代へ

それでは一体、私たちはどうしたらいいのだろうか。専門家らが口をそろえるのは「まずは経営者が変わるしかない」ということだ。思い切った経営判断をするしかない。

もっとも、就業規則や法律で定めれば全てが解決するわけでもない。私たちが新たに直面しているのは、ジョブ型でもメンバーシップ型でもない、新たな形の雇用社会だと濱口は警鐘を鳴らす。

「いま世界で起きているのは『タスク型』雇用社会の出現」と、濱口は言う。「配車サービスのウーバーをはじめ、ジョブの中にある一つ一つのタスクを単発仕事(ギグ)として請け負う『ギグワーカー』が出てきたことで、これまでの安定したジョブ型の雇用も急速に壊れつつある」

タスク型になれば、もはや休みも失業も、労災という概念もないというわけだ。世界は産業革命以前の時代に戻りつつある、という危機感を持っている専門家が多い。

しかも目下、世界は新型コロナウイルスの影響で未曾有の雇用危機に陥っている。現在、外出制限下にある人は世界合計で39億人に上るとも言われており、アメリカでは3月下旬の2週間で約1000万人が失業保険を申請した。そんななか、世界中でリモートワーカーも増えているが、それに伴い今後「働く」と「休む」のバランスはどう変化していくのだろうか。

働き方や休み方を考える上で忘れてはいけないのは、ユートピアに見える北欧もほんの30〜40年前は日本と同じような状況にあったということだ。社会的変容を迫られて法律や制度を変え、それによって人々の価値観が変わってきた。

実は私たちの考える文化や習慣というものはそれほど強固なわけではない。2~3年もたてば新しい習慣が「常識」になり、10年もたてばすっかり「文化」として定着する。文化が違うから、習慣が違うから、歴史が違うから、人口構成が違うから......というのは「変われない」理由にはならない。

「変われなかったら、滅びるだけ」。立命館アジア太平洋大学の出口は何度もそう繰り返した。「歴史を見れば分かる。変化に対応できなかった文明が滅んだのではない。どこも改革はしている。滅んだのは、スピードが遅かったせいだ」

<2020年4月21日号「日本人が知らない 休み方・休ませ方」特集より>

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イタリア出身で在日15年になる女性(39)は、日本の大学院を卒業後、日本の翻訳会社に就職した。主な業務は、日本の企業が発注する技術翻訳の下請け。この業界はクライアントの力が強く、厳しい条件を突き付けられても引き受けざるを得ないことが多い。結果、残業も土日出勤も日常茶飯事。夜は9時に退社できればいいほうで、家に仕事を持ち帰ることも当たり前だった。

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