Marcela Ayres Bernardo Caram
[ブラジリア 25日 ロイター] - ブラジル経済は近年、予想を上回る成長を遂げてきたが、増大する債務と根深い構造問題が、来年1月に始まる左派ルラ大統領の4期目の政権運営を難しくする可能性がある。
ルラ氏が直面する主な経済課題は以下の通り。
<膨張する債務>
ブラジルの公的債務の国内総生産(GDP)比は、ルラ氏の現任期中に10%ポイント超上昇し、82%を超えた。これが借り入れコストを押し上げている。
根本的な原因は、長年にわたる義務的支出の増加だ。連邦予算のうち調整可能な部分は8%未満にとどまる。
ルラ氏の財政を巡る発言には一貫性がなく、債務への懸念を「ばかげている」と退ける一方、力強い経済成長が問題を解決すると主張することもある。
政権の経済チームは、歳出の伸びに上限を設け、基礎的財政収支(プライマリーバランス)の目標を定める現行の財政ルールを維持すると約束し、厳格化も示唆している。
ただ、ルラ氏は既に社会保障給付を引き上げ、新たな支出も約束した上、最低賃金をインフレ率以上に引き上げると公約している。最低賃金の引き上げは年金支出も増やすため、目標達成は一段と難しくなる。
<高金利と根強いインフレ>
ブラジルの金利は13.75%だが、年間インフレ率は4.6%と、中央銀行が定める1.5─4.5%の許容範囲をなお上回っている。
中銀は景気減速の兆候が強まっていることを受け、9月に5会合連続となる利下げを実施した。しかし、市場はインフレ率が2029年まで公式目標の3%を上回り続けると予想している。
ルラ氏は公約で、社会プログラムを削減せずに財政規律を確保し、金利を引き下げると約束している。一方、大半のエコノミストは、金利低下のペースを速めるには歳出削減が不可欠だと指摘しており、両立の道筋は不透明だ。
<債務に苦しむ家計と企業>
信用情報会社セラーザによると、高金利の影響で債務の返済を滞納しているブラジル人は過去最多の8400万人に迫り、企業も過去最多の930万社に上る。
失業率が過去最低を記録し、賃金の伸びがインフレ率を上回るなど経済指標は好調だが、返済難が国民の不満を高めている。
ルラ氏は新たな債務救済策を計画している。今回は銀行が抱える家計向けの不良債権を割引価格で買い取るほか、一部の小規模事業者の滞納税を免除する。アナリストは、こうした措置による救済効果は一時的なものにとどまると指摘する。
政府は、クレジットカードや無担保消費者ローンなど、手軽に利用できるものの金利が高い信用供与への過度な依存を抑える方策についても中銀と協議している。ただ、具体案は明らかにしていない。
<改革に必要な政治的影響力の不足>
議会選で、1980年代の民政復帰以降で最も保守的な議会が誕生したことから、ルラ氏は経済政策の実現に苦戦する可能性が高い。
ルラ氏は25日の大統領選決選投票で右派のフラビオ・ボルソナロ上院議員を破ったが、ボルソナロ氏が所属する自由党とその協力勢力が上下両院を支配する見通しだ。
ルラ氏の側近は税優遇措置の縮小を引き続き推進する政権の意向を示しているが、議員らは実効税負担を引き上げる措置に繰り返し抵抗してきた。
ルラ氏は現任期中、最高裁や中銀、証券規制当局、競争当局など主要機関の人事で、候補者の指名と上院の承認獲得に苦戦してきた。議会の右傾化で、今後は一段と難しくなる公算が大きい。
<税制改革の不透明感>
ルラ氏は23年、消費税の抜本的な改革について議会の承認を得た。27年1月には新たな付加価値税が導入される予定だ。
導入まで3カ月を切ったが、政府は適用される実効税率をまだ公表していない。独立系アナリストは28%程度になると推計している。
政権はまた、選挙期間中の反発を恐れ、たばこや酒類など健康や環境に有害とされる製品への新税を定める法案の議会提出を見送ってきた。
この遅れによって新税による歳入の確保が後ずれする可能性があり、政府の税制運営への批判が強まっている。