とはいえ同性愛の矯正について、これ以上にいい映画が今後作られるかは分からない。そのヒントは、2人の俳優の違いにありそうだ。ヘッジズの感情を抑えた演技は目が離せないが、熱を帯びる場面では役に入り切れていない。ガラスケースの中の写真に石を投げ付けたり、父親と対決したりと感情を爆発させるところでは、本物の混乱や恐れが感じられない。
その一方で、小さな役ではあるが、いつも新しいあざをつくっている入所者を演じたグザビエ・ドランは素晴らしい。一瞬の場面でさえ、まなざしにも声にも絶望が感じられ、人間が破壊されていくさまを演じ切っている。彼の中の恐怖や怒りを映画にできれば、同性愛矯正に対する人々の考え方を本当に変えられるかもしれない。
<本誌2019年04月23日号掲載>

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