Julie Zhu Lisa Baertlein

[香港/ロサンゼルス 29日 ロイター] - 人工知能(AI)開発を巡る世界的な競争が、アジアの航空貨物の地図を書き換えつつある。電子商取引(EC)の勢いが鈍る中、航空会社は成長する半導体製造拠点を中心に、交通網の再設計を進めている。

航空会社や物流会社によると、AIインフラに関連する需要は、パンデミック後の小口貨物ブームとは異なり、高性能メモリーチップやプロセッサーの複数年受注や、データセンターへの数千億ドル規模の投資計画に支えられている。

一方、米国と欧州の少額輸入品に対する規制強化により、近年の業界成長の大部分を支えてきた越境EC取引は鈍化している。

「ECは航空貨物にとって最大の成長の柱だったが、もはやそうではない」と、貨物分析会社ゼネタのニール・ファンデワウ最高航空貨物責任者は、同社が7月に発表した年央見通しについて述べた。

大韓航空は、この変化を如実に示す事例の一つだ。

同社の第2・四半期の貨物収入は、前年同期比46%増の1兆5400億ウォン(約1750億円)に急増した。同社によれば、AIチップ、サーバーラック、データセンターインフラが成長の主軸となり、中国からのEC貨物に代わって主要な成長要因となったという。

大韓航空の貨物事業責任者を務めるウム・ジェドン執行副社長は、「最先端のハイテク貨物が中核的な成長要因となっている」と述べた。

ウム氏によると、異例と言えるほど需要は見通しやすい。広帯域メモリーチップやプロセッサーの受注は、需要が供給を上回り続ける中、すでに2─3年先まで積み上がっているという。

ゼネタによると、4月の世界半導体売上高は前年同月比で2倍超となり、1986年の統計開始以来で最も高い伸びを記録した。これに対し、中国の低価格品・EC輸出は5月に7%減少し、6カ月連続のマイナスとなった。

米国は昨年、小​口貨物を無関税で輸入できる「デミニミス制度」を廃止した。一方、欧州連合(EU)も今月、独自の免税基準を廃止した。

ファストファッションのシーインは26日、こうした変更が同社の米国事業に打撃を与え、欧州でもさらなる逆風になる見通しだと述べた。ANAホールディングス は声明で、半導体関連貨物は堅調に推移しているものの、EUの措置は貨物市場全体にとって下振れリスクだと指摘した。

<貿易ルートを塗り替える動き>

貨物構成の変化は、アジア全域の貿易ルートも塗り替えている。日本は半導体製造装置を輸出し、韓国は最先端メモリーチップを生産し、台湾は最先端チップ生産の中心地となっている。

ベトナム、マレーシア、タイ、シンガポールは、北米や欧州向けAIサーバーの重要な製造・組み立て拠点として存在感を増している。

シンガポール・チャンギ空港グループの航空ハブ・貨物開発担当エグゼクティブバイスプレジデントのリム・チンキアット氏によると、同空港の貨物取扱量は、世界的な半導体需要の強さを背景に、上半期に前年同期比8.7%増加した。

航空各社は、こうした物流の流れに合わせて事業体制を再編している。

日本航空によると、過去1年間における中国を除くアジア発航空輸出の増加分の約80%をテクノロジー製品が占めた。これは半導体やAI関連ハードウエアが地域の貨物流動を大きく変えつつあることを示している。同社は台北、バンコク、ハノイなどの半導体拠点と東京・成田空港を結ぶ貨物便を拡充した。

ANAは、日本貨物航空を統合し、大型貨物機をより多く太平洋路線や欧州路線へ投入するとともに、アジア域内ネットワークを活用して域内の製造拠点から半導体貨物を集約する方針を示した。

台湾では、中華航空が生産拠点多様化に対応して東南アジア向け貨物便を増便した。同社はAI関連需要が寄与し、上半期の貨物取扱量が8.1%増加したとしている。エバー航空は、AI関連貨物が現在、貨物収入の最大半分を占めていると述べた。

航空会社によると、AI関連ハードウエアは、精密で高価値の半導体製造装置や画像処理プロセッサー(GPU)、完成品のサーバーラックなどを含むことが多く、従来の航空貨物とは異なる取り扱いが求められる。

国際航空運送協会(IATA)は、AI関連製品が2025年の航空輸送貨物量の7%に過ぎない一方、輸送品価値では53.5%を占めたと推計している。多くのEC貨物と異なり、AIハードウエアは小型で非常に高価値なうえ、データセンターのプロジェクトの日程を守るため時間的制約が厳しいケースが多く、高い輸送コストを払っても航空輸送を利用する価値がある。

市場変化に対応するため、キャセイパシフィック航空は、半導体製造装置やAIハードウエアの感度に応じて、機内での積載・固定方法を自動判定するソフトウエアを導入したとしている。

急増する需要は、貨物インフラにも負荷をかけている。ダイマーコ・エクスプレス・グループによると、AI・半導体関連貨物により、台湾・台北の航空貨物ハブは7月に満杯となり、米国向けおよびアジア域内路線の貨物スペースは逼迫した状態が続いている。

大韓航空のウム氏は「大手テクノロジー企業が次世代AIプロセッサーを投入し、長期的なインフラ投資を継続する中、26年下半期を通じて強い貨物需要が続くと見込んでいる」と述べた。

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