Eduardo Baptista
[北京 31日 ロイター] - 中国の軍事研究者が、米オープンAIやアンソロピックが開発した主要な人工知能(AI)モデルの出力を使って中国製AIシステムを訓練し、同国の防衛能力向上を図っていることが分かった。ロイターが中国の学術論文と特許80件余りを調査した。
調査結果から、中国の軍・安全保障関連機関が、米国の最先端AIモデルを利用して専用システムの開発期間を短縮している実態が浮かび上がった。米政府が先端半導体など戦略的技術への中国のアクセスを制限する中でもこうした動きが進んでいる。
文書によると、強力なAIシステムの出力を使って、より小型で用途を特化したモデルを訓練する「モデル蒸留」と呼ばれる手法が広く利用されている。蒸留したモデルは最先端AIを一から構築する際に必要となる膨大な計算資源がなくてもローカル環境で運用できる。
60件を超える論文を分析したジェームズタウン財団のサニー・チャン研究員は、中国の軍事科学者が西側諸国のモデルの推論過程を組織的に取り込み、監視やサイバー戦、戦術的意思決定に応用していると指摘した。
「中国軍とつながりのある研究者が、西側諸国のモデルに組み込まれた高コストで独自性の高い推論能力を、自分たちで管理しローカルで運用できる小型システムに移そうとしていることをこれらの論文は示している」と語った。
<監視から軍事運用まで幅広く利用>
ロイターとジェームズタウン財団による論文の調査では、中国の研究者がコンテンツ監視から軍事運用まで幅広い目的で蒸留を利用していることが分かった。
中国の兵器産業と密接な関係を持つ中北大学では、研究者がアンソロピックの「Claude 3 Haiku」を使い、ソーシャルメディアの監視とコンテンツ管理に用いるテキスト分類モデル向けの合成訓練データを生成した。
人民解放軍の国防科技大学が2024年に発表した論文には、蒸留によって画像処理モデルを小型化し、無人航空機に搭載した事例が記されていた。これにより、通信が途絶えた場合でも、無人航空伊が映像をリアルタイムで分析し、航行や標的選定の判断を支援できるという。
26年に発表された研究によると、中国軍事科学院の研究者は、ドローン、艦船、無人潜水艇が参加する海上作戦のシミュレーションで、蒸留した標的認識モデルを戦術機器上で稼働させた。
<利点と限界>
中国は、米国の先端半導体輸出規制によって高度な計算資源の確保を制約される中、最先端AI分野で米国に対抗するため蒸留を積極的に採用している。
ただ、蒸留されたモデルが受け継ぐのは選択された一部の能力に限られ、最先端モデルが持つ幅広い知能を完全に再現することはできない。
AIデータ企業サピエンの共同創業者トレバー・コベルコ氏は、蒸留されたモデルの能力は元となる教師モデルに及ばないと指摘した。「(蒸留は)選択した能力を、より低コストでローカルに管理できるシステムへ移す手法と理解するのが適切だ。最先端AIからの自立を実現するものではない」と述べた。