しかし人間の脳のような学習をする「ディープラーニング」を用いたアルファ碁の勝利は、状況の変化を期待させる。李が新著『AI超大国』で書いたように、「革命」はまだ5年ほど先と思われていた。しかし「もはやそうではない」と、本人も言う。

革命の鍵となるのは膨大なデータと、それを処理できるコンピューターだ。これらは既に存在している。平均的なスマートフォンの能力でさえ、69年に人類初の月面着陸に使用されたコンピューターを上回る。膨大なデータはディープラーニング・プログラムを「訓練」し、パターンを認識させる。そして、強力なコンピューターがデータを高速で処理する。

中国版「スプートニク・ショック」の前まで、AIの重要な研究のほぼ全てはアメリカ、イギリス、カナダで行われていた。だが李たちは、AIの基礎となる革新の時代は終わったと考える。未来は、革新的な技術を実用化できる企業や国の手にあるという。

欧米に迅速に追い付く方法を、中国は知っている。大勢の起業家が、技術革新をビジネスに結び付ける方法を学んでいる。数億人もの国民も実生活の新しいデータを日々、提供している。

世界でAIが実用化される時代が訪れるとき、中国は有利な立場にいる。そう考えるのは李だけではない。

<本誌2019年02月05日号「特集:米中激突 テクノナショナリズムの脅威」>

※2019年2月5日号(1月29日発売)は「米中激突:テクノナショナリズムの脅威」特集。技術力でアメリカを凌駕する中国にトランプは関税で対抗するが、それは誤りではないか。貿易から軍事へと拡大する米中新冷戦の勝者は――。米中激突の深層を読み解く。
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