しかし貿易問題の専門家たちは、ライトハイザーの手法はリスクが大き過ぎると考える。中国にサイバー攻撃や技術移転の強要、国内企業の保護をやめさせるのはいいが、そのために世界の二大経済を沈没させるリスクを冒してもいいのか。圧力を強めれば中国は本当に態度を改めるのか。このまま関税などの圧力を続けた場合、決定的な危機を招かずに済むのか。

実際、トランプ政権内でも財務長官のスティーブン・ムニューシンや国家経済会議委員長のローレンス・カドローらは、そうした懸念を口にしている。彼らは、ライトハイザーよりも穏健なアプローチを好んでいる。

今のところ、トランプはライトハイザーの主張になびいているようだ。しかしトランプが簡単に考えを変えることは周知の事実だ。

昨年12月にブエノスアイレスで開催された20カ国・地域(G20)首脳会議でトランプは習近平と食事を共にし、25%の関税適用を先送りした。しかし、その期限も2月末で切れる。もしもトランプが、アメリカの望む全ての条件をのまない中国との交渉を打ち切り、25%の関税を課す事態となれば、それはライトハイザーの勝利を意味するのだろう。それがいいことかどうかは、全く別の問題だが。

<2019年2月5日号掲載>

※他にも、米中軍事衝突の現実味、中国の快進撃に火を付けた「スプートニク・ショック」など。詳しくは2019年2月5日号「米中激突:テクノナショナリズムの脅威」特集をご覧ください。
ドナルド・トランプが米大統領として初めて中国を訪れたのは一昨年の11月。既に両国間の貿易摩擦は高まりつつあった。だからこそ中国側は特別に紫禁城を案内するなど、トランプを手厚くもてなした。晩餐会では習近平(シー・チンピン)国家主席も笑顔を振りまいた。ただし具体的な成果は乏しかった。同行した米企業との間で総額2500億ドル相当の商談をまとめた以外は、半年に1度の高官級「戦略経済対話」の重要性が確認されたくらいだ。
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