アジアの合成薬物市場は拡大を続ける一方だ。これまで地域ごとに分かれていた密輸網は今、国境を超えた巨大なネットワークへと一体化しつつある──。国連薬物犯罪事務所(UNODC)は今月、アジアの合成薬物市場に関する年次報告書にこう記した。
報告書によれば昨年、東アジアと東南アジアで押収された覚醒剤メタンフェタミンは前年比48%増の349トン、麻薬のケタミンは前年比185%増の52.5トンと、いずれも過去最高を記録した。「この地域の薬物密売を支える構造が全く変わっていない証拠だ」と、UNODC東南アジア太平洋地域事務所のデルフィーヌ・シャンツ代表は語る。
押収された覚醒剤の94%は、東南アジアから流出したものだった。「東南アジアの陸路および海上ルートを通じて膨大な量が密売されている実態を示している」と、報告書は指摘する。
供給源の中心はミャンマー東部のシャン州だ。犯罪組織や武装勢力の存在に加え、中国や東南アジアの薬物・原料市場に近い地理的条件が生産拡大を後押ししている。2021年の国軍によるクーデター後の混乱や武力衝突も密売を助長しているという。
さらにUNODCは、薬物密売組織と東南アジア各地に広がる大規模なオンライン詐欺拠点との結び付きが強まっていると警告した。報告書によれば、1月にはミャンマー当局がシャン州の2郡で「合成薬物を製造していた大規模施設群」を摘発。このうち1カ所は、オンライン詐欺拠点とみられる施設のすぐ近くにあったという。
UNODCによると、この事例は「違法薬物製造と東南アジアの詐欺産業、さらには広範な地下経済が資金面で結び付いている可能性」を示している。