ベセント氏の「メッセージ」

ベセント米財務長官は5月、パリでのロイターとの単独インタビューで日銀の植田和男総裁に言及し、「優れた中央銀行総裁だ。必要なことを行う余地が与えられれば、優れた金融政策を実現すると確信している」と語った。

日本政府内では、ベセント氏が日銀に早期利上げを促した発言だと捉えられた。実際、経済官庁幹部は「米は直接的に『利上げしてほしい』とは言わない。ベセント氏の言い回しで十分にメッセージを伝えているつもりだろう」と語った。

米からの事実上の注文がある中で、高市氏としても利上げを妨げるような行動は取りにくいというわけだ。

一方、複数の政府関係者は「高市氏に金融政策の確固たるポリシーはないようだ」と語る。為替や長期金利の動向に気を揉むことはあっても、政策実現にこだわる姿勢を変えようとはしない。ある政府関係者は「選挙で支持された政策にこだわるのは政治家として当然」としつつ、「マイナーチェンジができないことで、糸が切れた凧のようになる懸念がある」と話した。

こうした高市氏の姿勢は、日銀との距離感にもつながっているという。複数の関係者は今回、「高市氏は日銀の背中を押すことも引っ張ることもしなかった」と説明する。そのうちの1人は「為替や金利への影響を含めてすべては日銀の責任でやれ、ということだ。日銀の独立性を考えれば、それは本来の政府と日銀の姿でもある」と語った。

「利上げ環境に変化の可能性」

市場の関心は年内の再利上げの有無に移る。株価が歴史的高値水準にある一方、政府内には「バブル」の破裂への懸念もくすぶっている。米とイランの和平合意が物価抑制につながれば、「日銀が年内の再利上げにこだわる必要がなくなる可能性もある」(経済官庁関係者)との見方もある。向こう数カ月の国際情勢や市場動向を受け、高市氏のスタンスはどう変化するのか。ある政府関係者はこう答えた。「一貫した方針があるわけではない。本人が最後の最後に何と言うか、誰にも分からない」

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