金融業のイメージが強いSBIグループがキリングループの協和発酵バイオと提携。抗老化作用が期待される成分、5-ALAの独自ブランド「SBI 5-ALA」を発表した。あわせて、3年後に5-ALA全体の市場を200億円規模へ成長させる事業戦略発表会が開催された
発表会には、SBIホールディングス株式会社代表取締役会長兼社長の北尾吉孝氏、5-ALA を用いた健康食品・化粧品事業を行うSBIアラプロモ株式会社代表取締役社長の竹崎泰史氏、キリンホールディングス株式会社取締役常務執⾏役員ヘルスサイエンス事業本部⻑の吉村透留⽒、協和発酵バイオ株式会社代表取締役社⻑の⻑野宏⽒が登壇し、この事業のビジョンを語った。
さまざまな領域の老化現象にアプローチ
5-ALAとは5-アミノレブリン酸というアミノ酸の一種で、人間や動植物を含めたさまざまな生命体が普遍的につくり出している物質だ。人間の場合、細胞内のミトコンドリアの中でつくられ、8分子が連結した後、Fe(鉄)が加わることでヘムという物質になる。
ヘムは生命活動の根幹である呼吸(酸素運搬)や代謝を担い、ミトコンドリアがエネルギー(ATP)を産生するための基盤になる。つまり、5-ALAはミトコンドリアの機能を活性化させる働きがあり、人間のあらゆる生命現象に不可欠なものといえる。
しかし、17~18歳頃をピークに5-ALAの量は減少し、ミトコンドリアの機能低下によって疾患が生じたり、老化現象が進んだりすると考えられている。実際に臨床研究によって、血糖値、疲労感、運動効率、睡眠の質、メンタルストレス、免疫、美容という7つの領域で老化現象にアプローチするエビデンスが得られている。

そして5-ALAの重要な特徴として、外部から摂取してもヘムに変わることが可能だという性質がある。5-ALAは口から入れると、アミノ酸トランスポーターというアミノ酸専用の入口を通って細胞の中に入ることができる。
実は、体内の5-ALAはミトコンドリアの中でつくられた後、一度その外に吐き出され、8つの5-ALAが連結した後に再びミトコンドリアの中に取り込まれ、そこに鉄が入ってヘムに変わる。そのため、口から入った5-ALAも、体内でつくられる5-ALAと連結してヘムになることができる。
ちなみに5-ALAは発酵食品やほうれん草などの植物性食品、イカやタコなどの動物性食品にも含まれるが、その量はきわめてわずか。有効量を補うには、最も含有量が多いとされるワインでさえ3.3kg以上飲まなければならない。
約20年にわたって5-ALA事業を牽引
こうした5-ALAの特徴に注目したのが、SBIホールディングスの北尾氏だった。日本の5-ALA事業はコスモ石油が農業用の肥料開発として推進し、1998年に発酵法による大量生産方法を確立したところからスタートしている。
「当時、コスモ石油の岡部敬一郎会長から5-ALAのことを聞かされたが、本業ではないバイオにはお金をかけられないという話だった」と、北尾氏は発表会で話した。
SBIグループはコスモ石油の技術を引き継ぎ、2008年に5-ALA事業に参入。2013年には5-ALAを配合したサプリメントを販売し、さらに5-ALAはがん細胞に特異的に蓄積する特性があるため手術中に使う診断薬を開発し承認された。2015年には5-ALA配合の機能性表示食品を製品化し、現在では健康食品・化粧品と医薬品の2つの分野で展開している。
5-ALAを発酵法で製造できる会社は世界的に見ても極めて限られている。SBIグループは、これまでに世界60以上の研究機関と共同研究を行い、300件以上の特許を取得。49カ国以上で5-ALAを用いた製品を展開してきた。金融業で知られる同グループは、実は5-ALAの世界的リーディングカンパニーでもあった。
しかし、2025年2月に5-ALAの物質特許が満了。市場構造が大きく変化することが予測され、特にSBIグループが懸念したのは海外から安価な原料が流入し、5-ALA全体の品質や安全性が脅かされることだった。
そこで世界最高水準の発酵技術を持つ協和発酵バイオと提携。純国産・純度99.9%以上の5-ALA原料を共同で開発し、製造を協和発酵バイオが担うことになった。
「協和発酵バイオは約70年にわたって発酵技術を磨いてきた会社なので、今回の提携は重要な転換点になる。世のため人のために、健康を増進するヘルスケア事業に注力したい」と北尾氏はスピーチを締めくくった。
既存市場の健全化と、新たな市場の創出

SBIアラプロモの竹崎氏は、SBI 5-ALAブランドの事業戦略として3つの柱を発表。第1の柱「抗老化サイエンスの中核へ」では、東京大学発のエピゲノム解析スタートアップであるレリクサ社の主導による「エピクロック共創プロジェクト」への参画を表明した。
このプロジェクトは生物学的年齢(エピジェネティッククロック)を測定し、老化を可視化・制御するためにさまざまな企業が連携して行われている取り組み。SBIアラプロモはエビデンスに基づく抗老化価値を可視化し、5-ALAを究極の抗老化素材として確立することを目指す。
第2の柱「高品質原料による市場健全化の主導」では、キリングループの協和発酵バイオと提携した狙いについて語った。「SBI 5-ALA」という新しいブランドをつくった理由は、5-ALA市場の健全な成長を牽引していくためであり、SBIグループの長年の先進研究や商品開発実績に、協和発酵バイオによる高品質な原料が加わることで可能になったという。
第3の柱「BtoBエコシステムの構築と市場創出」では、原料供給やOEM事業にも事業領域を広げていく方針を提示。サプリメントをはじめとした従来のBtoCだけでなく、BtoCとBtoBの両軸で5-ALA市場を拡大していくことをアピールした。
というのも同社の調べによると、5-ALAに対する世間の認知度は18%程度しかなく、大きな課題となっているからだ。そのため、「5-ALA普及協会」の設立を発表。「SBI 5-ALA」だけではなく、5-ALA自体を普及させるために研究機関、メーカー、流通・小売と連携し、製品の開発や一般生活者への情報提供、エビデンスの循環までを包括する取り組みに力を入れていく。
「これら3つの柱による事業戦略を推進することで、現在60億円規模の市場を3年後に200億円規模へ成長させることを目指す」と竹崎氏は意欲を示した。
高純度の原料を国内工場で一貫製造
キリンホールディングスの吉村氏からは、キリングループのヘルスサイエンス事業についてのプレゼンテーションが行われた。同グループは酒類、医薬、飲料・ヘルスサイエンスという3つの領域で事業を展開し、祖業のビールをはじめとしたさまざまな事業で発酵バイオテクノロジーを強みとしている。
CSV先進企業として生活者のウェルビーイングに取り組むことを重視し、中でもヘルスサイエンス事業がその役割の中心を担っている。今回の提携では、発酵バイオテクノロジーで高付加価値素材を創出する協和発酵バイオとキリングループの強みが掛け合わさって、新しい5-ALA原料の供給が実現した背景について語った。
SBIグループと共同開発した5-ALAの生産技術には、3つのポイントがある。1つ目は目的の物質をつくるために微生物を育種する技術、2つ目はラボの技術をスケールアップする工業化の技術、3つ目は適切な体制によって安定した品質のものを提供する技術。その結果、5-ALA原料は山口県防府工場で一貫製造され、食品安全委員会による安全性評価を経た原料であることにも言及した。

今回のSBIグループと協和発酵バイオの提携は、誰もが年齢にとらわれず活躍できるエイジレス社会の実現を目指すものだ。人生100年時代と言われる一方で、平均寿命と健康寿命には約10年のギャップがあり、医療費も増え続けている。
こうした背景から、労働力不足による経済成長の損失を回避し、医療を治療中心から予防へと転換していくためにも、5-ALA事業には大きな期待が寄せられている。