[3日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)が3日に公表した地区連銀経済報告(ベージュブック)によると、全体的な経済活動について12地区のうち10地区が「小幅(SLIGHT)」から「緩やか(MODERATE)」なペースで拡大した。一方、1地区は小幅に縮小し、1地区は横ばいだったと報告した。
経済は投資ブームに沸く一方で、消費の弱さや採用鈍化の兆し、物価上昇に直面しており、こうした中でウォーシュ新議長はFRBのトップを引き継ぐことになる。今月16、17日には就任後初の連邦公開市場委員会(FOMC)に臨むが、今回のベージュブックを受けて利下げ慎重論がさらに強まる可能性がある。
消費支出は地区によってまちまちで、物価高による購買力への圧力が続く中、所得層による二極化が一段と鮮明になった。高所得世帯は底堅く、値上げへの感応度も相対的に低かった一方、中所得世帯については「1ドルを使う際に、その価値をぎりぎりまで引き出そうとしている」との指摘があった。低所得層では家計の逼迫感がより強まった。
物価は全体として「緩やか」から「力強い(STRONG)」ペースで上昇し、大半の地区が前回報告よりインフレ率が高まったとした。中東紛争に伴うエネルギー関連コストがインフレ圧力の主因となり、その影響は輸送、包装、食料品、肥料に波及した。ハイブリッド車(HV)人気が高まっているほか、肥料の高騰に伴い、ニューヨーク州では収穫量の大幅減少が見込まれているとの報告もあった。
今後6カ月の事業見通しについては「不確実性の高まりと個人消費の減速の兆候が重荷となり、大きな変化は見られなかった」と記した。
明るい材料として、12の地区連銀のうち9つが、人工知能(AI)向けデータセンターの建設が投資需要に加え、建設・製造業の労働需要を押し上げていると指摘した。
オックスフォード・エコノミクスのエコノミスト、ナンシー・バンデンハウテン氏は、こうしたまだら模様の状況について「高い物価が低・中所得世帯を圧迫し、イラン戦争のひずみを感じている経済と整合的だが、今年は約2%の国内総生産(GDP)成長を生み出すだけの勢いはなお残っている」と述べた。
<一部若年層は採用鈍化に直面>
ウォーシュ氏は5月22日、パウエル前議長の後任として就任した。多くの政策当局者はその頃から、ここ数カ月で再び加速したインフレに警戒を強め始めた。再加速の一因はイラン戦争だ。インフレはFRB目標の2%を5年以上にわたって上回っている。
政策当局者の発言や4月末のFOMC議事要旨に基づくと、FRB内の見方は年内の利下げが行われるという見通しから、現行の金利水準の長期据え置き、または利上げさえ適切かもしれないとの見方にシフトしている。
FRBが重視する個人消費支出(PCE)価格指数は4月に前年比3.8%上昇に加速。一方で、一時弱含んでいた労働市場は安定したとみられる。ロイターがエコノミストを対象に実施した調査では、米政府が5日に発表する5月の雇用統計で失業率は4.3%にとどまると予想されている。
トランプ大統領は、利下げを進めると期待してウォーシュ氏を起用した。ただ、足元のガソリン価格急騰を受けて、即時利下げの要求は控えている。今回のベージュブックは、現在3.50─3.75%に据え置かれている政策金利の引き下げに反対するFRB内の議論に重みが増す可能性がある。
一方、複数の地区連銀からの報告によると、AIの利用拡大を受けてキャリア初期の労働者の採用が鈍化したもようだ。
ミネアポリス地区連銀によると、月次調査では企業の3分の1が4月に価格を引き上げ、「人件費以外の平均投入価格が過去2カ月間で2%超上昇したと回答した企業が過半数を占め、4分の1は5%超の上昇を報告した」という。
雇用は11地区でほぼ横ばいだった一方、1地区ではわずかに増加した。
ニューヨーク地区連銀によると、ニューヨーク州北部の人材紹介業者は「市場でエントリーレベルの労働者が供給過剰になっている」と指摘した。一方、ニューヨーク市周辺の技術系人材紹介会社は「採用プロセスが長期化しており、候補者は採用までに数カ月かけて複数回の面接を受けている」と報告した。
複数の地区が、防衛関連活動とデータセンター需要の拡大が製造業の採用を支えていると報告した一方、大半の地区では引き続き「低採用・低解雇」の状況で、労働者は転職に慎重だった。