今年のシンガポール最大のイベントをモチーフにしたかったのは分かるが...... Channel NewsAsia / YouTube

時間的に厳しいデザイン変更

シンガポール政府は民間の事業であることからこれまで公式なコメントを避けている。今回の衣装のデザインへの国民の批判があまりに強いものの、12月16日の世界大会までもうほとんど時間がないことから、この問題の衣装で出場する以外には手段はないとみられている。

もっとも一部からは美の競演であるミス・ユニバース世界大会に「米朝首脳会談」という政治的なメッセージを込めた衣装で参加することへの疑問も示されており、最終的にこの半円形のスカートを着用しないという選択肢もある、といわれている。

米朝会談は国際的アピールか無駄使いか

シンガポール政府は米朝首脳会談の場所を提供し、警備費などで総計約13億円相当を支出した。一部で税金の無駄使いとの指摘もなかったわけではないが、政府の「シンガポールの国際社会での評価を高める」との声に批判はかき消された形となった。

シンガポールは報道の自由、言論の自由が厳しく制限された管理国家だけに、シンガポールを自画自賛する政府の姿勢をそのまま手放しで伝える現地報道機関にシンガポール人も「洗脳」されてしまっているという。

そうしたことが今回のミス・ユニバースのシンガポール代表の衣装にも反映された形となり、政府の「国際社会での評価」を「忖度」するデザイナーと、表立って批判や反論が広がらない官製メディアの「自主規制」が浮き彫りとなっているとの見方が有力だ。

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[執筆者] 大塚智彦(ジャーナリスト) PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など
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