Noriyuki Hirata

[東京 3日 ロイター] - 人工知能(AI)・半導体関連株上昇の勢いが継続している。調整らしい調整もなく青天井にも見える相場つきだが、米実業家イーロン・マ‌スク氏が率いる宇宙企業スペースXによる超大型の新規株式公開(IPO)でリバランス売りが強まれば、米AI株高にブレーキがかかり、日本株にも影響が及ぶ可能性がある。

世界的なAI相場の「潮目が変わり得るとしたら、米国で複数控える巨額のIPOだろう。資金の流れが変わるかどうかがポイントになる」とりそなホールディングス市場企画部の武居大暉ストラテジストは話す。

<リバランス売りの懸念>

巨額IPOの第1弾となるスペースXは早ければ11日の価格決定を目指すと報じられている。ターゲット評価額は1.75兆─2兆ドル、調達額は750億ドルを超えるとされ、サウジアラビア国営石油会社サウジアラムコの2019年の新規株式公開(IPO)での256億ドルを上回り史上最大のIPOになると見込まれている。

AI関連株は上昇ピッチが急ではあるが、業績の裏付けを伴っている銘柄も少なくない。加えて、中東情勢の不透明感が晴れない中で、原油供給制約が意識される銘柄を手掛けにくいことも、AI関連株への資金集中を促している。多くの市場関係者からは、AI株を今、積極的に売る理由は特にないとの見方が聞かれる。

一方、大型IPOに伴って、機械的なリバランス売りが生じるリスクへの警戒感も浮上している。スペースXはナスダック市場への上場を目指していると報じられており、実現すれば指数に連動するパッシブファンドから売りが出るとみられている。IPOへの参加資金を確保するため、保有株を売却する換金売りも見込まれる。

足元のAI相場はレバレッジがかかっているとして「逆回転すると(株価の)調整が強まりかねない」とりそなHDの武居氏は身構える。

<ノイズか転換点か>

直接的なリバランス売りの対象は米国株が中心だが、米国市場で半導体株安となれば日本株もつれ安しかねない。英半導体設計大手のアームホールディングス株が機械的に売られれば、出資するソフトバンクグループの株価を通じて日経平均やTOPIXにも影響が波及する可能性も意識されている。

野村証券の北岡智哉チーフ・エクイティ・ストラテジストは大型IPOに関して「出資者の得た利益を元手に好循環が生じて市場が活性化するという面がある」との見方を示す。一方、1990年代末以降のITバブル期のIPO金額のピークは2000年1─3月期で、株価の高値と重なったケースも過去には見られたとし「ジンクスとして意識する投資家もいる」と話す。1996年1月以降の米IPO金額と12カ月先のS&P500の騰落率には「一定の負の相関もみられる」との分析も示している。

今年は超大型IPOラッシュとなる。スペースXに次いで、早ければ9月にも米オープンAI、年末にかけて米アンソロピックがIPOを実施するとみられている。オープンAIは3月末時点で8520億ドルの評価額と伝わっている。アンソロピックは4月、未公開株式による資金調達で650億ドルの資金調達を実施した際、評価額9650億ドルとされた。

現時点ではAIの成長ストーリーが変わるとの見方は少数派となっている。フィリップ証券の増沢丈彦株式部トレーディング・ヘッドは「(大型IPOにともなう)需給でいったん売られるとしても、数日から数週間でこなし、上昇基調に回帰するというのが基本シナリオ」との見方を示す。一方、それでも戻らない場合は「相場の転換点として意識されてくるかもしれない」と話している。

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