(背景など情報を追加しました)

David Jeans

[ニューヨーク 26日 ロイター] - 米実業家イーロン・マスク氏率いる宇宙開発企業スペースXが展開する衛星通信サービス「スターリンク」に誘導された米国の自爆型ドローン(無人機)「ルーカス」が、対イラン戦争で目に見える戦果を上げ始める中で、同社が米国防総省に対してスターリンク利用料金の引き上げに動いたことが分かった。

ロイターが確認した国防総省の文書や、この件に詳しい2人の関係者の話では、米国が爆撃作戦を開始してから数週間以内に、スペースXの幹部らが米国防総省の当局者と面会した。そこでスペースX側は、米軍が1端末当たり約5000ドルの接続料を支払っているが、実態としては2万5000ドルに近い上位階層のサービスを利用していると主張した。

背景には、ルーカス運用を含めて近年、米国防総省とスペースXの価格設定を巡る緊張が高まっていることがある。

関係者のうち2人によると、イラン政府による通信遮断を回避しようとする同国市民を支援したい米国防総省は、市民に第5世代(5G)移動通信サービスに近い「ダイレクト・トゥ・セル(携帯端末への直接通信)」接続を提供する計画の価格設定についても、スペースXと対立しているという。

こうした一連の動きを通じて、米国防総省がスペースXへの依存度を強めており、米国の国家安全保障の極めて重要なレベルでマスク氏の影響力がいかに大きくなっているかがうかがえる。

米小売り大手ウォルマートなどの店舗で購入できる消費者向けのスターリンク端末とは異なり、スペースXは2023年の契約に基づき、「スターシールド」と呼ばれる軍事専用版を米国防総省に販売している。関係者に話を聞くと、スターシールドの端末は商用のスターリンク衛星と、同じくスターシールドと呼ばれる別のより安全な衛星コンステレーションの両方に接続できる。

スペースX側の見解では、ルーカスが低価格の陸上用や移動用サービスよりも「航空用」プランに近い条件で運用されている。一方米国防総省の当局者は、月額2万5000ドルという価格設定は航空機向けであり、スターリンク接続を数分から数時間しか使用しない自爆型ドローン向けではないと反論した。

ただイランへの攻撃を強化していた米国防総省は、最終的にスペースXが提示した値上げに同意し、ルーカス1機当たりのコストをほぼ倍増させた。

スペースXはコメント要請に応じなかった。

米国防総省は、スペースXが値上げしたことや支払いの決定、またイラン市民にスターリンクの携帯サービスを提供する計画に関するロイターの報道についてコメントを拒否した。

ロイターの報道後、マスク氏はXへの投稿で詳細には触れずにこれを「誤りだ」と一蹴。民間用のスターリンク・システムが「軍事目的」で不適切に使用されたと付け加えた。別の投稿では、責任は米国防総省ではなく「会社側」にあるとも述べた。

シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)の上級研究員クレイトン・スウォープ氏は、従来の防衛産業とは異なり、スペースXはロケット打ち上げや人工知能(AI)ビジネスに加え、スターリンクという巨大な民間市場を持っているため、米国防総省に対してより強い交渉力を持っていると指摘する。

米証券取引委員会(SEC)への提出書類によると、スペースXは総収入の約20%を米政府から得ている。

スウォーブ氏は「スペースXは確かに米政府の弱みを握っている」と言い切った。

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