※この記事は後編です。前編「『抑止力による平和』を提唱するイスラエルのネタニヤフは、中東をどう作り変えるのか」はリンクからご覧ください。

だがチャーチル同様、ネタニヤフの功績も多方面から批判され、その評価をめぐってイスラエル史を代表する2人の指導者──ダビド・ベングリオン初代首相とメナヘム・ベギン第7代首相と比較されがちだ。

【動画】イラン戦争に宗教を利用するネタニヤフ

イスラエル軍元幹部で国家安全保障研究所の上級研究員アサフ・オリオンによれば、ベングリオンは国家建設の礎を築き、独立戦争を勝利に導き、イスラエルの政治的・軍事的影響力を確立した。ベギンは法の支配と民主的秩序を尊重しつつ、エジプトとの歴史的な平和条約を実現した。「ただし、ベギン政権下でイスラエルはレバノン戦争に深く関与し、ほぼ一世代にわたるヒズボラとの泥沼の戦闘に突入した」

オリオンはそう指摘しつつ、ネタニヤフは2人には及ばないと主張する。「ベングリオンやベギンとは対照的に、ネタニヤフは法治国家の基盤を傷つけ、国家体制と国民の結束、国内の力を弱体化させている」

米コロンビア大学イスラエル・ユダヤ研究所の講師で、ベングリオンらに関する著作があるアビ・シロンはさらに辛辣だ。「ビビは失敗した指導者として記憶されるだろう」と、彼は本誌に語った。「パレスチナ問題を回避しようとしたが、10月7日を機に、その問題に再び世界の注目が集まってしまった」

「彼はオバマ時代のイラン核合意から離脱するようトランプを促したが、トランプは結局、当時と同じような合意を結ぶことになるだろう」

オリオンもシロンも、ネタニヤフ政権下で米国内のイスラエル支持が急落したと指摘する。ガザやレバノンに暮らす民間人の悲惨な映像が世界中に広まった上、イラン戦争の影響でガソリン価格が高騰している。さらに、ネタニヤフの意向でアメリカが不要な戦争に引きずり込まれているという印象も強まっている。

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深刻なのはイスラエル社会の分断
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