深刻なのはイスラエル社会の分断
シロンによれば、何よりも深刻なのはイスラエル社会が分断されている現実だ。国民は終わりの見えない戦争の連鎖に閉じ込められている。汚職疑惑の裁判を含むネタニヤフ自身の国内問題も、歴史的評価という点では好材料とは言えない。
「汚職疑惑や裁判、多くのイスラエル的価値観や制度が損なわれた事実が、彼のレガシーの汚点となる」と、シロンは言う。「ベギンは戦争もしたが、和平も成し遂げた。ベングリオンに至っては、控えめに言っても国家建設そのものに貢献した」
一方、イスラエルの情報機関モサドの元情報局長で国防省の元幹部でもあるゾハル・パルティは、評価はまだ定まっていないとみる。「この2年半について確定的な結論を下すのは時期尚早だ」と、現在はワシントン中近東政策研究所フェローのパルティは本誌に語った。「個人的にはエジプトやヨルダンとの平和条約、さらにアブラハム合意のほうがより重要だと思う。いずれも『力』が生み出した明確な成果だからだ」
「その力の真価が問われるのは、サウジアラビアやクウェート、そして願わくは再びイランを含む各国がイスラエルの承認と和平に向かうかどうかだ」と、パルティは言う。
とはいえ、ネタニヤフの戦場での成果は明白だ。また過去30年間の中東情勢を予見してきた彼の先見性は、批判者でさえ認めざるを得ない。
「イスラエル有数の戦略家たちが描き、同盟国も支持してきた壮大な構想に、彼は一貫して反対してきた」と、イスラエル国家安全保障会議の元外交政策局長シャニー・モアは本誌に語った。「そして、彼が『起こり得る』と警告したことの大半が現実に起きた」