江原道春川市にある有名な観光地、南怡島
江原道春川(カンウォンド・チュンチョン)市にある有名な観光地、南怡島(ナミソム)(撮影=筆者)

参加費の高騰も原因に

4月はじめ、中学生の子をもつ保護者がオンラインコミュニティに公開した案内文が波紋を呼んだ。江原道2泊3日の修学旅行の案内で、車両費12万1000ウォン、宿泊および朝食15万ウォン、食費9万7000ウォン、体験および入場料10万9000ウォン、安全要員費7万8000ウォン、その他の運営費5万1000ウォン、合計60万6000ウォン(約64,000円)と記載されている。投稿者は「子どもが費用を見て修学旅行に行かないと言っている」「友人たちも多数が行かない」と記していた。

2025年に修学旅行を実施したソウルの中学校の費用を見ると、最も安かったのは江原道2泊3日の28万3000ウォン(約27,000円)で、最高額は済州島2泊3日の100万1000ウォン(約106,000円)。高校も江原道2泊3日の30万ウォン(約32,000円)から日本旅行3泊4日の191万3000ウォン(約203,000円)となっている。

ある教員は2014年に起きたセウォル号沈没事故以降、専門人員の配置など安全規定が強化されたと説明するが、江原道で60万ウォンは高すぎるという反応が多かった。結局、論争を引き起こした中学校は修学旅行そのものの中止を決めたという。

コロナ禍での課外活動縮小が影響?

教育専門家は、教員のリスク回避が生徒の健全な成長を阻害していると主張する。校外学習は教室で学んだ知識を社会で応用する機会であり、運動会は勝敗を通じて挫折や克服を学ぶ重要な教育プロセスだという。

新型コロナウイルス禍で課外活動が激減した影響が学校文化として定着しつつあるなか、こうした活動のさらなる縮小は子どもの社会性や情緒発達にも悪影響を及ぼしかねないと懸念する声もある。
 

ネットでは「かわいそう」「学校生活の大事な思い出」「制度のために子どもが損をしている」という声がある一方、「事故で刑事責任が問われるなら、やりたくないのも当然」「教員の負担が大きすぎる」「中止は仕方がない」など教員に同調する意見もある。

教育の機会均等の観点からも問題に

与党・共に民主党系の研究機関は「教師の訴訟に対する国家責任制度」の導入を提案するなど、政界でも議論が始まっており、教員個人が責任を一身に負う現行制度を改め、学校や行政が組織として責任を担う仕組みへの転換を求める声は高まる一方だ。

学校行事が消えていくなか、森林体験や博物館プログラムなど民間主催のサービスに流れる児童生徒が増えているという調査結果もある。かつて学校が無償で提供してきた「体験」が有料の商品に取って代わられるとすれば、教育の機会均等という観点からも深刻な問題を提起している。

【関連記事】
ニューズウィーク日本版 世界宗教入門
2026年5月19日号(5月12日発売)は「中東新秩序の勝者」特集。

剛腕首相ネタニヤフが図ったアラブとイランの弱体化で、中東に訪れる新時代

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら
※画像をクリックするとアマゾンに飛びます