Takahiko Wada

[東京 14日 ロイター] - 日銀の増一行審議委員は14日の講演で、中東情勢の緊迫化に伴い景気下振れの兆しが「はっきりとした数字」で表れないのであれば「できる限り早い段階での利上げが望ましい」と述べた。燃料費の値上がりを受けて物流費の上昇にいっそうの勢いがつけば物価への影響は広範に及び、「一時的なショックと言うよりも、より基調的なものとして物価を押し上げるのではないか」と警戒感を示した。

鹿児島経済同友会で講演した。4月の金融政策決定会合では9人のボードメンバーのうち3人が利上げを主張したが、増委員は現状維持に賛成した。「先月慌てて利上げしなければいけないほどの状況ではないと判断した」と説明した。

しかし、マイナス圏にある実質金利が不動産価格の高騰を招くおそれがあるなどとして「実質金利がマイナスという状況は早く解消すべき」と指摘。デフレ的な慣行が解消されつつあり、インフレに入ってきていることを踏まえれば、ここから大切なことは「適時・適切な利上げによって基調的な物価上昇率が2%を超えないように抑えること」だと述べた。

基調物価は「まだ2%の下にいるものの、かなり2%に近付きつつある」と指摘した。円安に端を発した物価上昇が、世の中のインフレ予想を引き上げ、基調物価に影響する可能性がないか「十分に留意する必要がある」とも述べた。

日銀は3月、景気や物価に対して中立的な実質金利である自然利子率の最新推計を公表し、マイナス0.9%程度―プラス0.5%程度だとした。ここに2%物価目標を足せば、中立金利はプラス1.1%程度―プラス2.5%程度となるが、増委員は、段階的な利上げで中立金利の推定レンジに接近しているため「今後は物価、雇用、金融環境などをより細かく点検して行くことが必要」と述べた。

その上で「政策金利を中立金利の推計レンジにしっかりと入れることで、上下両にらみで機動的な施策が行える体制が整えられるよう、さらなる利上げを進めていくことが金融正常化の完成には求められている」と指摘した。

6月の金融政策決定会合では、国債買い入れの減額計画について中間評価を行う。増委員は先行きの買い入れのペースについて「マーケットの状況も見極めながら、しっかりと検討していく必要がある」と述べた。

日銀のバランスシートを異次元緩和の前の水準まで縮めるべきかと言えば「必ずしもそうとは限らない」とし、リーマンショック以降、世界各国で金融機関への流動性規制が強まり、中央銀行の準備預金に対するニーズが変化してきている状況なども踏まえつつ「適正なバランスシートの水準を目指して行くことになる」と話した。

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