※この記事は後編です。前編「石油危機が米欧の結束を強めてきたが、イラン戦争は事情が違う?」はリンクからご覧ください。

そして今、世界は第4の石油ショックに直面している。その震源地はイランだ。このイスラム共和国は暴力的で国内では不人気だが、その存在は反帝国主義と資源主権の主張と切っても切れない関係にある。

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今度の戦争でイランがホルムズ海峡を封鎖し、中東産原油の輸出を止めると、アメリカは対抗してイランを海上封鎖し、イラン産原油の輸出を止めた。こうしてエネルギーの流れが止まり、現在の国際経済秩序の脆弱性が改めて露呈した。

エネルギーだけではない。半導体生産に不可欠なヘリウムの流通を含め、サプライチェーン全体が混乱している。投資家は地政学的リスクに敏感なため、湾岸諸国でのデジタルインフラやAI(人工知能)関連の投資に及び腰になっている。

一方で、地政学的な同盟関係にも変化の兆しがある。20世紀のエネルギー危機は欧米諸国の結束を強めたが、今回は逆に分断を促す方向にある。今回の戦争で明らかになったのは、アメリカやイスラエルにはイランの攻撃から湾岸の産油国を守る能力がないという事実。そうであれば別の誰かと手を組むしかない。だからサウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)はウクライナに、カナダは中国に接近しようとしている。

とりわけアメリカの置かれた状況は深刻だ。長年の同盟諸国は第2次トランプ政権に愛想を尽かし、もっと信頼できる別の貿易パートナーを探している。関税を外交の武器と心得るアメリカとの貿易関係に不透明感が漂うなか、EUは懸案となっていたブラジルやアルゼンチン、パラグアイ、ウルグアイとの貿易協定で最終合意に達し、インドとも画期的な貿易協定を結んだ。

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