Casey Hall Ellen Zhang

[上海/北京 7日 ロイター] - 中国企業の営業担当者、ユー・ヤンシャン氏は、14、15日に予定されているトランプ米大統領の訪中について、自分たちには無関係だと語る。この会社が販売する電気ロッカーや自動販売機の大半が、米国向けに輸出されているにもかかわらずだ。

「米国は貿易を続ける限り、我々とビジネスをせざるを得ないだろう」とユー氏。「中国のサプライチェーンと製品の質は極めて強固だ」と自信を示す。彼女の会社は、コスト増の一部を米国の消費者に転嫁する戦略をとっている。

関税の影響は依然として無視できないものの、関税率が一時的に3桁に跳ね上がった激動の2025年も同社は乗り越えたとユー氏は説明。米国の顧客ベースはほぼ維持しており、多くの中国輸出企業と同様、世界中で新たな市場も開拓しているという。

ユー氏によれば、これは中国の製造業が身につけた競争力と回復力の証左だ。長年の国家戦略である「自給自足」、つまり幅広い産業で完璧に近い国内サプライチェーンを構築する方針に従ってきた結果だという。

トランプ氏についてユー氏は「彼が来て交渉しようが闘いを宣言しようが、我々にとって大きな脅威にはならない」と言い切った。

<多地域への市場拡大>

ユー氏によると、トランプ関税や、イランでの戦争に起因する原材料価格の高騰に対処するため、会社は欧州、南米、東南アジア、アフリカへの市場拡大をもう一つの戦略の柱に据えている。

これは中国政府の国家戦略を反映したものだ。

中国は2025年、過去最高となる1兆2000億ドルの貿易黒字を記録した。オランダの経済規模に匹敵する額だ。中国企業は既存の競合他社よりも低い価格を提示することで、新市場に参入している。

対米輸出は20%減少したが、アフリカ向け輸出は25.8%、中南米は7.4%、東南アジアは13.4%、欧州連合(EU)は8.4%、それぞれ増加した。

トランプ氏に関税を撤回させるため、中国政府は世%界が中国のサプライチェーンに依存していることを「てこ」に使い、レアアース(希土類)の輸出制限に踏み切った。

レアアースの生産は中国に集中しており、米国を含む世界中の産業は中国産レアアース無しには立ち行かない。

サプライチェーン・コンサルタント会社タイダルウェーブ・ソリューションズのシニアパートナー、キャメロン・ジョンソン氏は「レアアースはトランプ氏に対する究極の切り札だ」と言う。

中国はまた、医薬品や産業機械、そして米国が電力網を拡張するのに必要な変圧器の供給を制限することも可能だと同氏は指摘した。

短期的に見れば、米国はイランでの戦争によって一定の交渉力を得た。米国には、中国などが必要とする余剰エネルギーがあるからだ。しかし紛争がエスカレートした場合、長期的には幅広い産業を抱える中国が優位に立つと同氏は予想。「米国が中国に歩み寄りを示しているのはそのためだ」と語った。

<製造拠点分散の切迫感薄れる>

関税問題が米中対立の中心から外れるにつれ、中国の製造業者は生産拠点を分散しなければならないとの切迫感から解放されつつある。

米国事業が収益の70%を占める受託製造業者ジェニメックス・グループのアジア代表、ジョナサン・チタヤット氏は、トランプ政権第1期にベトナムとタイで、最近ではインドとインドネシアで、新たなサプライヤーを確保した。

しかしサプライヤー500社の75%は依然として中国国内にあり、その多くは米国が中国への関税を引き下げる一方で他国への関税を引き上げた後、移転計画を取りやめた。

「我々は皆、極端な行動を取らないことを学んだ。静観していた人々は、今では待っていて良かったと感じている」とチタヤット氏は語った。

車椅子やスクーターを製造するプライド・モビリティ・プロダクツの調達担当副社長、マイク・セーガン氏は、約100社から成る同社サプライチェーンの70%ないし80%が、依然として中国に依存していると話す。

「脱リスク(デリスキング)や分散が消えるわけではないが、急ぐ必要はなくなった。パニクは収まり、トランプ氏の発言に対しても人々は少し耐性が付いた」

<休戦だけでは不十分>

海外の工場プロジェクトを扱う中国企業の幹部、レン・イェンリン氏は、企業はトランプ氏の動きに過剰反応しなくなり、脅しの言葉にも「平気になった」と説明。「もう関係ない、という態度だ」と語った。

上海の米商工会議所会頭、エリック・チェン氏によると、約3000社の会員企業はトランプ氏の訪中で大きな成果が得られるとの期待を抱いていないが、対話が行われそうなことには安堵している。

同氏によると、関税や輸出規制を巡る「休戦」が延長されれば、会員企業は歓迎するだろう。中国がボーイング機や米国産大豆、エネルギーなどの購入を約束する可能性も視野に入っているという。

しかし休戦状態が長続きすると信じている者は少ない。

チェン氏は「休戦は素晴らしい。貿易戦争よりはましだが、休戦は一時的なものだ」と指摘。「我々は、ある程度の確実性を必要としている。企業は今後90日や6カ月ではなく、数年単位の長期的な計画を立てる必要がある」と語った。

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