Elizabeth Piper Andrew MacAskill
[ピーターヘッド(英スコットランド) 5日 ロイター] - 英スコットランド北部の漁業の町ピーターヘッドに暮らす元漁師のジェームズ・ブキャンさん(38)はこれまで、右派ポピュリスト政党「リフォームUK」の党首で英国の欧州連合(EU)離脱を主導したナイジェル・ファラージ氏に対して反感を抱いてきたが、その気持ちをいったん押さえ込むことにした。同氏への不信感以上に、政府の数十年にわたる破滅的な政策によって空洞化した地元経済への危機感が強くなったからだ。
ブキャンさんは今週、初めてリフォームUKに投票するつもりだ。北海での石油・ガス開発の最大化や、EU諸国の漁船に対する操業規制といった同党の公約は、町の再生に向けた最良の選択肢だと考えている。「この辺りの一部はスラムのようになり始めている。資金が循環する方法を見つけなければ」と焦燥感をにじませた。
スコットランド、西部ウェールズ両自治政府議会、南部イングランド地方議会などで7日に始まる統一地方選では、ブキャンさんのような有権者によってリフォームUKの得票が急増するとみられている。
リフォームUKは2029年までに行われる次期総選挙を前に、全国世論調査で支持率が与党・労働党や最大野党・保守党を上回っている。これまでは主にイングランドで支持を伸ばしてきたが、二大政党制への拒否感を背景に、現在はスコットランドやウェールズにも浸透しつつある。
世論調査によると、リフォームUKは7日のスコットランド議会選とウェールズ議会選でそれぞれ地域政党のスコットランド民族党(SNP)、プライド・カムリ(ウェールズ党)に次ぐ第2党に躍進する可能性が高い。得票率はスコットランドでは21年の0.2%から約20%に、ウェールズでは約1%から30%近くに急伸すると予測されている。一方、労働党は大幅に得票を減らし、保守党も数議席にとどまる見通しだ。
スコットランドとウェールズは歴史的に左派色が強かったが、今ではリフォームUKが掲げるポピュリスト的メッセージの受け皿になった。すなわち、何十年も続く政治システムを壊し、「リベラルな既成エリート」を追い出し、地域課題により集中するため移民を厳しく取り締まるというリフォームUKのポピュリスト的な訴えだ。
ウェールズの渓谷地帯にある町バーゴイドの商店街も閉店した店が目立つ。1970年代の炭鉱閉鎖以降、深刻な打撃を受け、ウェールズ政府から「貧困が根深い地域」に分類されている町だ。
地元のパブでは、おおっぴらでこそないが、密かにリフォームUKを支持する声が聞かれた。「ここは非常にリフォームUK寄りのパブだ」と語るのは、元舞台設営技師のウェイン・ハントさん(60)。自身は「よりウェールズ的」なプライド・カムリを支持しているという。
スコットランド議会選に立候補しているリフォームUKのコンラッド・リッチー氏は、今回の地域選挙を同党による国政進出への重要な足がかりと位置づけている。「今回の議会選でまた一つ足場を固められる。総選挙はそう遠くないだろう。次の総選挙で与党になる可能性があると真剣に思っている」と語った。
一方、18年に「ブレグジット党」として発足し、21年に改称したリフォームUKを巡っては、国政はおろか、地方政府を担う準備すら全く整っていないと指摘する声もある。
実際、党内でも準備不足への懸念は根強い。匿名を条件に取材に応じた党関係者6人は、スコットランドとウェールズ両議会で第1党となるよりも、まずは第2党に甘んじて行政・議会運営に慣れた上で国政選挙に望む方が得策だとの見方を示した。
<候補者審査が混乱>
リフォームUKにとって最も厄介で、不祥事が相次いでいるのが候補者の審査だ。24年の総選挙では、差別的発言などを理由に100人余りの候補者を除名する事態となり、その後は信用調査会社によるチェックを導入するなど候補者審査の厳格化を進めてきた。ある候補者によると、タブロイド系トークショーの司会者による模擬のメディア面接まで行われたという。
それでも問題は収まっていない。今年3月にスコットランドとウェールズで160人超の候補者を発表したが、それ以降15人が、人種差別的な過去の投稿の発覚や党内対立、事務的ミスなどで立候補を辞退した。
ウェールズではナチス式敬礼の写真が出回った候補者が辞退。スコットランドでは、英国初のイスラム教徒指導者を「英国人ではない」、「イスラム過激派の愚か者」と呼んだ人物が立候補を取り下げた。SNPとプライド・カムリは、リフォームUKが移民問題を巡って緊張をあおっていると非難している。
<幻滅した有権者>
世論調査会社サバンタの政治リサーチ責任者、クリス・ホプキンス氏は、左と右に両極化していた従来の投票パターンが、EU離脱が決まった16年の国民投票を機に崩れていると指摘する。「今の有権者にとって重要なのは、機能していないシステムを変えるという点だ。未知に賭けることを以前よりもいとわなくなっている」と述べた。
リフォームUKから立候補しているリッチー氏などによると、同党はスコットランドやウェールズで労働党・保守党双方の離反者に加え、長年投票してこなかった層も取り込んでいる。所得税減税や道路整備といった地域密着型政策が支持を集めているという。