Karen Brettell

[5日 ロイター] - 8日に発表される米雇用統計は、経済が米連邦準備理事会(FRB)の金融政策据え置きに十分な耐性を維持しているか、あるいは労働市場の軟化によって、イランとの戦争でほぼ埋もれていた利下げの根拠が復活する可能性があるかの試金石となる見通しだ。

堅調な経済成長と戦争によるインフレへの懸念から、市場は今年中の利下げはないと予想。これは1月にフェデラルファンド(FF)金利先物市場が年内に25ベーシスポイント(bp)の利下げを2回織り込んでいた時とは大きく異なる。

ノムラの米国金利デスク戦略責任者ジョナサン・コーン氏は「イラン問題の不確実性を除いても、現時点で経済は大幅な緩和を必要としていないと主張できるだろう」と指摘した。

アナリストらは、労働市場の悪化の明確な兆候があれば、FRB当局者が利下げを検討し始める可能性があるものの、先月の雇用統計の強さやその他の堅調な経済データ、高止まりするインフレを考慮すると、雇用統計が弱いものであっても、それだけでFRBのコンセンサスが変わる可能性は低いとみている。

投資家は、株式など資産価格の上昇を維持するために、低金利に期待している。一方アナリストらは、戦争が近いうちに解決したとしても、強いデータは利下げに反対する根拠を後押ししているとみている。実際、3月雇用統計では米非農業部門雇用者数は17万8000人増となり、ロイター調査でエコノミストが予測した6万人のほぼ3倍となった。失業率も4.3%に低下した。

FRB当局者の間で金融緩和が最優先事項となっている兆候は今のところほとんど見られない。FRBは直近の米連邦公開市場委員会(FOMC)で金利を据え置いたが、3人の政策担当者が利下げを示唆する表現に反対した。

アナリストらは、FRBが利下げを行う根拠となる条件が大幅に縮小したと指摘した。

BMOキャピタル・マーケッツの米国金利ストラテジスト、ベイル・ハートマン氏は「FRBが利下げに踏み切るとすれば、それはインフレ統計で良いニュースが出たからではなく、労働市場の悪化が原因となるだろう」と述べた。労働市場の弱体化は複数の指標で確認される必要があり、おそらく失業率が持続的に上昇することになるとした。

ロイターが実施したエコノミスト調査によると、4月の雇用者数は6万2000人増、失業率は4.3%で横ばいが予想されている。

さらに、インフレのハードルは依然として高い。アナリストらは、紛争が始まる前からインフレは既に憂慮すべき軌道に乗っていたと警告しており、中東紛争が解決し原油価格が正常化したとしても、金利引き下げへの道を完全に切り開くことにはならないとしている。

ノムラのコーン氏は、FRBの金融引き締めを市場が長期的に織り込むことを妨げている要因として、パウエル氏の後任としてFRB議長に就任が予定されるケビン・ウォーシュ元FRB理事の承認や、依然として高水準に固定されている長期インフレ期待、FOMCの「暗黙のハト派バイアス」を挙げた。しかしコーン氏も、経済データが悪化しない限り、バイアスだけでは積極的な利下げを織り込むには不十分だと警告した。

マニュライフ・インベストメント・マネジメントの米国金利・住宅ローン取引責任者であるマイケル・ロリツィオ氏は、異例の規模の税金還付が、エネルギー価格上昇が消費に及ぼす影響を吸収したと指摘。その緩衝材がどれだけ早く消滅するか、そして原油価格の上昇が消費やその他の経済データにどのような影響を与えるかが、FRBの今後の方向性を評価する上で重要な変数となるとの見通しを示した。

現状では、双方にとってハードルは高いままだ。労働市場に亀裂が生じない限り、利下げの根拠を築くのは難しい。インフレ率が依然として高い状況では、現状維持の根拠は容易に構築できる。

コーン氏は「労働市場のデータに亀裂が生じ始めれば、より意味のある形で金利引き下げへの期待が再び高まる可能性がある。そうでなければ、市場はイラン戦前の水準まで完全に回復するのは難しいだろう」と述べた。

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