[スーラト(インド) 24日 ロイター] - イラン戦争を受けた化石燃料価格の高騰で、インドとバングラデシュのポリエステル供給業者や縫製業者が打撃を受けており、ザラやH&Mといったファストファッション小売業者のコストを押し上げる可能性が出ている。

インド最大級のポリエステル糸メーカーの一つ、フィラテックスのマドゥ・スダン・バゲリア社長はロイターに対し、糸の生産に必要な石油由来の原料である高純度テレフタル酸(PTA)とモノエチレングリコール(MEG)の調達コストが約30%上昇したと述べた。中国の供給業者が値上げに動いているほか、中東からの供給に混乱が生じているためだ。

打撃はアジアが中心を占める衣料品サプライチェーン全体に及んでいる。ビンダル・シルク・ミルズのアビチャル・アリヤ最高経営責任者(CEO)は、エネルギー危機で化学薬品や染料のコストが「劇的に」上昇したと指摘した。同社は、ファストファッション大手H&Mやザラを傘下に持つインディテックスのほか、米小売大手ターゲット、ウォルマートや家具小売大手イケアにポリエステル生地を供給している。

アリヤ氏によると、戦争による調理用ガスの不足を受けて、インド西部グジャラート州の繊維産業の中心地スーラトから多くの出稼ぎ労働者が離れたことも追い打ちをかけている。「最近は世界中からの注文に十分応えることが実際には難しくなっている」と同氏は語った。

石油由来の原料から作られるポリエステルは世界の繊維生産の59%を占め、ランニング用ショートパンツからドレスまであらゆる製品に使われている。ホルムズ海峡封鎖に伴う石油精製品の供給逼迫の直撃を受けている。

<ファストファッションのコスト上昇も>

圧力は最終的に、アジアのポリエステル中心のサプライチェーンに依存する小売業者にも波及する可能性がある。ただ、小売業者は仕入れの前倒しによって当面の打撃を回避できる見通しだ。

英小売業者のプライマークは、春夏物の在庫と秋冬物の大部分は影響を受けないと説明した。親会社のアソシエーテッド・ブリティッシュ・フーズのジョージ・ウェストンCEOはロイターに対し、「もし今日エネルギー関連の原材料を購入していたら大幅な価格上昇に直面していただろうが、そうではない」とした上で、「再び調達を行う頃には価格が下がっているかもしれないが、何とも言えない」と続けた。

ある業界関係者によると、H&Mは今後数週間以内にバングラデシュの供給業者から値上げの要請があると見込んでおり、それを吸収する方針だ。

H&Mは声明で、バングラデシュの生産には大きな混乱は見られず、「エネルギーコストに関連して注文を調整するよう求める供給業者からの要請は目立つほど観察されていない」と表明した。

ザラを傘下に持つインディテックスは、ポリエステル供給についてのコメントを控えた。ターゲット、ウォルマート、イケアからの即時のコメントは得られていない。

ザラやH&Mなどの小売業者は、ペットボトルなどの廃プラスチックから作られる再生ポリエステルの使用に大きく切り替えており、原油主導のコスト圧力をある程度緩和できる可能性がある。だが、世界全体ではリサイクル再生ポリエステルはポリエステル生産の12%を占めるにすぎない。

<ポリエステルショック>

スーラトのラデシャム・テキスタイルでは、ポリエステルを織る200台の工業用織機の半数が、2月下旬の紛争開始以降稼働を停止している。

オーナーのカウシック・ドゥダット氏はロイターに「戦争前の1日当たりの生産量は1万メートルだったが、今は3500─4000メートルまで落ち込んだ」と述べた。同氏は新たなポリエステル糸の購入を停止しており、急激な値上がりを反映すれば自社製品も約15%値上げせざるを得ないが、主な顧客である衣料品取引業者は受け入れないだろうと語った。

スーラトの繊維染色・プリント工場は、コスト上昇を受けて操業停止日を週1日から週2日に増やしていると、スーラト繊維貿易業者連盟のカイラシュ・ハキム会長は明らかにした。「この状況が続けば、原材料不足が始まり、工場は閉鎖を余儀なくされるだろう」と警告した。

ウッド・マッケンジーのデータによると、インドにおけるポリエステルステープルファイバー(PSF)価格は、2月末の1キロ当たり100ルピーから、1カ月後には126.5ルピーに跳ね上がった。インド政府が石油化学原料の輸入関税を引き下げた後にやや落ち着いたものの、4月9日時点でもなお120ルピーの水準にとどまっている。

世界最大のポリエステル生産国である中国でも価格は急騰している。

<需要破壊>

バングラデシュでは、工場の生産品はほとんどが綿ベースの衣料品だが、ミシンに使うポリエステルの縫い糸の価格上昇や、小売燃料価格の上昇による物流コスト増加に直面している。

ロイターが確認した文書では、英縫い糸大手コーツ傘下のコーツ・バングラデシュが「石油由来原料コストの急激な上昇」と輸送費の増加を理由に、4月15日付で15.5%の値上げを実施すると発表した。

「バイヤーはより慎重になり、注文を出す前にリスクを念入りに計算するようになっている。注文量に影響を与える可能性がある」と、バングラデシュ・ニットウエア製造業者・輸出業者協会のモハマド・ハテム会長は語った。

「この状況があと1カ月続けば、衣料品の生産は減少し、いわゆる需要破壊が起きるだろう。小売業者は値上げを迫られ、消費者は購入を減らすからだ」と、ウッド・マッケンジーの繊維担当主席アナリスト、ブルーナ・エンジェル氏は述べた。

<次はスニーカー>

エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)など石油化学由来の素材はスニーカーにも幅広く使われており、米小売業者は警鐘を鳴らしている。

米靴流通小売業協会のマット・プリースト会長は「靴の調達先がどこであれ、業界全体に幅広い影響が及ぶ」と語った。同協会は最近の報告で、合成ゴムの靴底からポリウレタンフォーム、接着剤に至るまで、靴に使われる石油化学由来部品を25品目特定している。

コスト上昇は小売価格の引き上げにつながり、ブランドが需要を予測することを難しくする可能性がある。

ナイキの広報担当者は「石油関連の原材料は製品コストに影響する」と述べた。

Reuters Copyright (C) 2026 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。