ベール論争が脅かすムスリム女子の教育

フランスではムスリム女性のベール着用について論争がやまず、ムスリムの女子学生の教育機会を脅かしている。

フランスは総人口の約10%をイスラム教徒が占めるムスリム大国だ。しかし、宗教から独立した中立性を保つため、公共空間での宗教表現を禁じる厳格な国家原則「ライシテ」が存在する。

04年、公立学校でのヒジャブ(ムスリム女性の頭を覆うスカーフ)着用を禁止する法律が制定され、国際人権団体からはムスリム女子学生の教育の権利が侵害されているとの批判も出ている。

国内ではムスリム系の私立学校が増え、礼拝や服装などの宗教的な表現が許される環境でフランスの一般的な教育を提供している。だが、ムスリム系学校の存続は次第に不透明になっている。21年、仏政府は国家原則よりも宗教的教義を優先するイスラム過激派への対策として、「共和国原則強化法」を制定。数々のムスリム系学校が助成金の停止や閉鎖処分を受けている。

一方でカトリック系の学校では監査が少なく、履修内容に同性愛嫌悪が見つかったケースでも助成金を継続していることから、宗教による格差と二重基準が指摘されている。

イスラム学校を標的にすることはムスリムの疎外感を深め、むしろ分離主義を助長しかねない。多様な国民の共生を目的とするライシテが、統合ではなく分断を生んでいる。