(4)競争原理や市場の洗礼を受けにくいので、実は技術的に遅れてしまっていても気づきにくい

(5)軍需で有名になると、そのブランドが反対派や非同盟国にとっては著しくイメージが悪化し、マイナスの経済効果がある

(6)ユーザー側は極めて政治的な官需であるので、往々にしてその国の政争に巻き込まれたり、贈収賄トラブルに巻き込まれる危険がある

この中で特に重要なのは(1)(2)であり、昭和の日本はこのことを理解していたので、民生品に特化した製造業を全方位外交にもアシストしてもらって、世界を制覇することができたわけです。

日本は世界の民生品市場で完敗した

では、こんなに弊害があるのに、どうして昨今は、財界や多くのメーカーの間で、軍需への期待があるのかというと、次のような理由からです。

「若い世代を中心とした世界の消費者ニーズを理解できなくなり、民生品の競争力が崩壊した」

「ロボットの高度化により、英語のできる理系人材を多数揃えないとデバイスの大量生産はできないが、教育のミスマッチのために人材を用意できない」

「先端産業が巨大化する中で、大規模な資金を集めてリスクを取れる経営がないと、半導体やAIの開発競争に加われない」

「空洞化が国内経済を破壊することを十分に理解せず、ホイホイと海外生産を展開して、気づいたら製造技術や品質管理を丸ごと盗まれた」

つまり、世界の巨大な民生品市場で完敗したので、二次リーグである官需に頼るようになり、その中でも一品一品を手作りする旧技術で何とかなり、比較的単価の高い定価販売ができる武器輸出に頼ろうとしているのです。しかも前述のようにさまざまな弊害がある中でです。

これは、世論が二分するとか、殺人の道具を売るのはイヤだとかいう特殊な意味ではなく、言葉そのものの意味において「落ちぶれ」以外の何物でもありません。財界にも、政界にもその反省がなければ、「ジャパン・イズ・バック」などと叫んでも虚しいだけです。

【関連記事】
ニューズウィーク日本版 戦争インフレ
2026年4月28号(4月21日発売)は「戦争インフレ」特集。

ホルムズ海峡封鎖でガソリン・日用品が高騰。世界経済への悪影響と「出口」を読み解く

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら
※画像をクリックするとアマゾンに飛びます