そこで調べてみて分かったのだが、砂はそれほど高い位置から落ちているわけではなかった。長年かけて蓄積した砂が、大きなスポンジの塊の上にたまっていたのだ。

それは前の住人が煙突に突っ込んでいたもので、本当ならホームセンターなどで買うべき専用バルーンの代わりに使っていたのだろう。

そして今や、その重みで一角がたわみ、ちょっとした振動でも新たに砂が落ちてくる。部屋のドアを強めに閉めるだけでも(わずかな気圧の変化で)それが起きる。覚悟を決めてスポンジを取り除き、大掃除をしなければならないのは分かっている。

でもどこまで大変なことになるか分からないから気が進まない――バケツをひっくり返したような砂と大量のほこりに襲われるかもしれない。それが済んだ後に、事態がどのくらい深刻か見極める必要がある。

煙突は内側から腐食しているのだろうか? 築150年もたつし、100年にわたってすすけた熱い煙にさらされてきたのだから無理もない。そして修理は厄介な作業になりそうだ――とんでもなく手の届きにくい巨大なレンガ造りの補修なのだから。

イギリスの問題を象徴しているかも

これは、ある意味でイギリスの多くの問題の比喩でもあるのではないかと思う。しっかり造られ、役割を果たし、長い間持ちこたえてきた。しかし時代は変わり、今は劣化が進んでいる。無視できるのにも限界がある。

応急処置という中間的な選択肢もあるが、それは費用がかかるわりに問題を数年先送りするだけの悪いとこ取りになってしまうかもしれない。だが、難問に立ち向かい根本的な解決を図るには多大なコストがかかる(この場合は煙突そのものを撤去することになるだろう)。崩れゆくものは、ジレンマを突きつけてくる。

【関連記事】
ニューズウィーク日本版 戦争インフレ
2026年4月28号(4月21日発売)は「戦争インフレ」特集。

ホルムズ海峡封鎖でガソリン・日用品が高騰。世界経済への悪影響と「出口」を読み解く

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら
※画像をクリックするとアマゾンに飛びます