1860年にフランスのランスで発見され、第一次世界大戦中の爆撃で破壊された失われたローマ時代のモザイク画。
そこに描かれていたのは上裸の「女性の獣人戦士(猛獣と戦う女性闘士)」だったのかもしれない。カリフォルニア大学バークレー校の歴史学者アルフォンソ・マニャスが学術誌『インターナショナル・ジャーナル・オブ・ザ・ヒストリー・オブ・スポート』に発表した。
米スミソニアン協会が発行する月刊誌『スミソニアン』などによると、この失われたモザイク画は現在、当時の考古学者ジャン・シャルル・ロリケのスケッチと断片のみが残っていた。それを再検討した結果、これまで曖昧だったモザイクに描かれた人物の性別と役割が改めて浮かび上がった。
このモザイクは3世紀の作品とされ、円形闘技場での見世物を描いた複雑な絵の一部だった。
中でも注目されたのは、ムチを手にヒョウと対峙する上半身裸の人物。従来、この人物は動物を煽る役の男性や、道化的存在と解釈されてきた。しかしマニャスは、身体的特徴や装備の欠如、立ち位置などから、この人物は猛獣狩りを行う女性戦士であると主張した。
ローマ文学には女性が猛獣と戦った記録が散見されるものの、視覚資料として確認された例はこれまで存在していなかった。この発見はローマの見世物に女性が関与していた可能性を示すものだが、原資料が失われ、専らスケッチに依拠していることから慎重な見方も示されている。女性闘士が裸体に近い姿で描かれている点についての解釈も定まっていない。
この発見は、ローマ社会でのジェンダー観に新たな光を当てるかもしれない。
【主要参考文献】
Manas, A. (2026). New Evidence of Women Fighting Beasts in the Roman Arena: The Woman in the Mosaic from Reims. The International Journal of the History of Sport, 1–29. https://doi.org/10.1080/09523367.2026.2632176
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