Paul Carsten

[ベルリン 14日 ロイター] - 12日の選挙でハンガリーの民族主義指導者ビクトル・オルバン氏が敗北したことで、欧州の極右勢力は最大の擁護者の一人を失った。

オルバン政権は右派ポピュリストや反自由主義的な政治家にとっての手本となり、トランプ米大統領やプーチン露大統領などから称賛を受けてきた。

16年間の在任中、オルバン氏は民族主義を推進し、市民社会とメディアを抑圧し、移民やLGBTQの権利、そして自由主義に反対した。また、トランプ大統領の「MAGA(米国を再び偉大に)」運動と欧州で最も緊密な関係を持つ指導者でもあった。先週、バンス米副大統領がオルバン氏支持を表明するためブダペストを訪れたことも、その近さを示した。

今回の敗北は、経済への不満や汚職、民主的自由の制限に対するハンガリー国民の反発が原因とされている。欧州で勢力を拡大する極右にとって、オルバン氏の退場は単なるモデルの喪失にとどまらない。各地で民族主義政権の樹立を目指すうえで、極右イデオロギーの推進に数億ドルを投じてきた資金力ある有力な盟友を失うことも意味する。

「オルバン氏はここ数年、欧州の極右勢力の象徴的存在であり、その枠を超えた存在でもあった」と、欧州の極右勢力と民主主義の衰退を専門とする米国在住の博士課程研究員、ガブリエラ・グライリンガー氏は述べた。「長期にわたって権力を維持し、自らのイデオロギーを国家に深く根付かせた点で模範だった。それは他の極右政党がいまだ達成できていないことだ」

オルバン氏とMAGA運動との緊密な関係は、一部の極右政治家からは諸刃の剣と見なされている。グリーンランド奪取をちらつかせるトランプ氏の脅しやイラン戦争が、欧州でのトランプ氏の深刻な不人気を招いているためだ。

ドイツの極右政党、ドイツのための選択肢(AfD)のマティアス・モースドルフ議員は13日、Xに「現米政権とのオルバン氏のこれ見よがしな友情は、同氏にとって大きな足かせになっていた」と投稿した。

<EUでの拒否権行使>

オルバン氏が欧州連合(EU)においてハンガリーの拒否権をたびたび行使し、ウクライナへの資金供与やロシアへの制裁を阻止してきたことは、EUの弱体化を望む他の政治指導者たちから称賛されてきた。

「彼はEUにとって目の上のたんこぶのような存在だったが、それは良いことだった」と、昨年英国で設立された反移民政党「アドバンスUK」のベン・ハビブ党首は述べた。

親EU派のペーテル・マジャル氏にオルバン氏が敗れたことを受け、AfD共同党首のアリス・ワイデル氏はXに、「彼の祖国に対する功績と欧州への貢献は、主権国家からなる大陸のために立ち上がるというわれわれの決意を今もなお鼓舞し続けている」と投稿した。

オルバン氏の影響力の大きさは、国内での成功だけでなく、自身の思想や政策を広める能力にも支えられていた。

オルバン氏は、政府資金と企業出資を通じて、マティアス・コルビヌス・コレギウム(MCC)のような民間研究機関やドナウ研究所などに10億ドル(約1589億円)超相当の資金を提供した。これらの機関は同氏率いるフィデス党の思想的な拠点として機能してきた。

「ブダペストは巡礼地になった。MAGA界隈の人々が絶えず訪れ、成功した戦略だった」と米ワシントンのシンクタンク、アトランティック・カウンシルのダニエル・フリード研究員は述べた。

ブダペストで開催された政治会議には、欧州各地や米国のグループが参加し、ヘリテージ財団、アメリカ・ファースト政策研究所、アライアンス・ディフェンディング・フリーダムなど、現トランプ政権で影響力を持つ主要組織が名を連ねた。

トランプ氏が大統領2期目の就任準備を進めていた時期、ワシントンでもオルバン氏と連携する研究機関の影響力は顕著だったと、ドイツ外交問題評議会のリサーチフェロー、ヤコブ・ロス氏は述べた。

「ハンガリーの代表団がいかに多く訪れていたか、ワシントンのハンガリー大使館がヘリテージ財団とどれほど活発に交流していたかを目の当たりにして、本当に驚いた」と同氏は語った。

マジャル氏は13日、MCCのような組織や政党行事への資金提供に納税者の資金をこれ以上充てないと表明した。

ただ、こうした研究機関はすでに一定の成果を上げており、資金状況が変わっても消滅することはないだろうとグライリンガー氏は指摘する。「これらの組織の多くは、指導者の、今回の場合はオルバン氏の統治が終わった後も、その思想を存続させるために設立されたものだ」と同氏は述べた。

<盟友は楽観姿勢を維持>

オルバン氏の欧州の盟友たちは、勢いはなお自分たちの側にあると確信しており、長期政権はしばしば国民の不満を高めるものだとしている。

フィデス党も加わる欧州議会の会派「欧州の愛国者」の議員、タンジェール・コレア氏は「ハンガリー政府の支援を失うのは惜しいが、ここからどう進むかだ」と語る。

コレア氏は、来年の大統領選を前にフランスの極右政党、国​民連合(RN)に有望な世論調査結果が出ているほか、自身の所属するポルトガルの極右、シェガ(Chega)党も昨年、議会で第2勢力になったと述べた。「われわれの一員が選挙に敗れたのは愉快ではない。だが、それが人生だ。前に進む」

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