Li Gu Samuel Shen Summer Zhen
[上海/香港 14日 ロイター] - 世界的に債券相場が下落する中、中国の債券市場は相対的に堅調な水準を保っている。中国は低インフレ環境にあり、原油ショックへの備えもできているため利上げを回避できるとの見方から、投資家が中国の債券を積極的に買い進めているのが要因だ。
一方、海外では欧米を中心に、エネルギー価格急騰で利上げ観測が高まっている。その結果、他の新興国市場で資金流出が続く一方、中国には資金が流入。米国などの主要国でイールドカーブがフラット化するのとは対照的に、中国ではカーブがスティープ化している。
富安達基金管理の債券ファンドマネジャー、ジェン・リャンハイ氏は「他の国については、投資家はスタグフレーションを意識した取引をしている」と指摘。米国債や日本国債の利回りが急上昇している点を挙げ、「中国では、こうした動きは見られない」と話す。
中国では個人消費の低迷がインフレ期待を抑え込み、その上に戦略的原油備蓄や石炭・再生可能エネルギーを中心とした電力網が、燃料価格の急騰から産業や消費者を守っていると投資家はみている。
国際金融協会(IIF)によると、3月には中国の債券市場に25億ドルの海外資金が流入した。一方、米国とイスラエルの対イラン戦争が続く中、他の新興国市場からは計167億ドルが流出した。
こうした債券相場の動きは利回りにも示されている。中国の1年物国債利回りが15カ月ぶりの低水準に落ち込んだ一方、オーストラリアから欧州、米国に至るまで各国の短期金利はこの数年間で最も急激な上昇をみせた。
短期金融市場でも、中国の流動性を示す重要指標である翌日物の担保付レポ金利が2年半ぶりの水準に低下。中国の株式市場や人民元も、この数週間は投資家の関心の的となっており、他の資産が下落する中で比較的底堅く推移している。
アバディーン・インベストメンツのマクロ投資部門副責任者、ルイス・ルオ氏は「中国国債は、今の環境で安全資産となっている。世界的なエネルギー供給ショックと、中国の国内経済の耐性という、他にはない組み合わせがあるからだ」と説明する。
<イールドカーブはスティープ化>
短期債への買いが進む一方で長期債では長年続いた上昇局面が一服しており、その結果、イールドカーブはスティープ化している。
深圳に拠点を置くウィッシュ・ファンドのリン・シェン最高投資責任者(CIO)は「短期的には、われわれは他国に比べて悪影響への耐性が強い。しかし原油価格が長期間にわたり高止まりすれば、最終的にはインフレが押し上げられる。戦争がすぐに終結しなければ、超長期債は避けるべきだ」と語った。
債券トレーダーのワン・ホンフェイ氏は、大手資産運用会社が「主に3年─5年物の国債を購入し、30年物には慎重になるのは当然だ」との見方を示す。
中国の30年物国債と1年物国債の利回り差は先週1.16%ポイントと、2023年8月以来の水準に広がった。しかし米国では10年債と2年債の利回り格差が3月にわずかに縮小した。
もっとも、中国も燃料価格上昇によるインフレ圧力から無縁というわけではない。今年3月には生産者物価が約3年ぶりに前年同月比でプラスに転じ、投資銀行の間では、わずかにあった利下げ期待が後退している。また、海外と比較すれば、中国の利回り水準は極めて低く、投資家が得られる利回り収入は少ない。
それでも市場関係者の多くは、中国は不動産市場が低迷し、消費も弱いことから、原油ショックが一巡した後も、利回りや短期金利に下押し圧力がかかり続けるとみている。
アライアンス・バーンスタインのストラテジスト、ジー・ユー氏は「金融引き締めの兆しは見られず、中国人民銀行(PBOC)がタカ派に転じるとの期待は小さい」と述べた。
さらに一部の投資家にとっては、安定性そのものが魅力だ。
シンクタンクCF40の研究員、ジュー・ホー氏は「中国の債券市場は比較的安定しており、海外市場との相関も低い」と言及。人民元高の流れも、海外資金を中国債市場へと引き寄せ、安全資産としての魅力を高める要因になっているとした。