人気の目的地は西欧
世代や性別を問わず、米国内の食料品やガソリン代、住宅費といった生活費の水準はもはや耐え難いレベルになっている。FRB(連邦準備理事会)の23年消費者支出調査によると、退職世帯の生活費は平均で毎月約5000ドルに達するが、25年6月時点の社会保障給付額は平均で2000ドル程度にすぎない。
とりわけ近年は医療費が急騰しており、退職者にとって懸念材料となっている。
個人年金会社ペンション・ビーによると、65歳のアメリカ人夫婦が退職後の医療費(介護費を除く)として用意したい金額は平均で約31万5000ドル。しかも退職後の年収の10~15%は医療費に消えることを覚悟しておく必要があるという。
アメリカ人が移住を希望する国の多くには一定水準の公的医療制度があり、民間医療保険の費用も安い。
ヨーロッパは退職後のアメリカ人にとって魅力的で、不動産情報サイトのリアルター・ドットコムによれば、人気が高いのはフランスとイタリアだ。大都市を除けば生活費はアメリカに比べてずっと安いし、観光名所が多くて食べ物もおいしいからだろう。
アメリカの退職者がフランスを目指すもう1つの理由は、おそらく租税条約だ。フランス在住のアメリカ人は所得が両国で二重に課税されず、受動的所得へのフランスの税金が事実上免除されている。
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