<「陰の実力者」の国会議長はトランプそっくりなネゴシエーター>


▼目次
改革派とは正反対の人物
デモ隊を殴打して自慢
「似た者同士」の対決

まだアメリカの市場が開く前、3月23日の月曜日の朝だった。米大統領ドナルド・トランプはイラン側の重要人物と「大変よく生産的な対話」を続けていると自身のSNSに書き込んだ(株価を上げ、原油価格を下げるには絶妙なタイミングだった)。ただし「殺されると困る」から相手の名は言えないとした。

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先週の月曜日朝、トランプの投稿 トゥルース・ソーシャル(スクリーンショット)

しかしイスラエルはすぐにその人物を特定した。名はモハマド・バケル・ガリバフ。イランの現国会議長にして過去には革命防衛隊の幹部、国家警察長官、首都テヘランの市長を歴任した男で、まだ生きているイラン指導部では最も権力の中枢に近いとされる。

なんとも華麗なキャリアである。和平仲介を目指す諸国は先週、パキスタンでガリバフを含むイラン代表団とアメリカの中東担当特使スティーブ・ウィトコフやトランプの娘婿ジャレッド・クシュナー、さらには副大統領J・D・バンスとの会談実現を試みた。向こう5日間はイランのエネルギー関連インフラへの攻撃をしないと、トランプも約束していた。

そのトランプはフロリダ州パームビーチの私邸で記者団を前に、この5日の間にうまく事が運べば当事者間で「問題を解決できる」かもしれないが、駄目なら「せっせと爆弾を落とし続けるしかない」と警告していた。

対するガリバフは、まず交渉そのものを否定した。SNSへの投稿では「アメリカとの交渉は一切ない。このフェイクニュースは金融市場と石油市場を操作し、アメリカとイスラエルが陥った泥沼から抜け出すために使われている」と断じた。ただし言葉を慎重に選んでいたのも事実。ガリバフもイラン外務省の報道官も、仲介者を通じてメッセージのやりとりがあったこと自体は否定していない。

ガリバフのX(旧ツイッター)投稿

皮肉な話だ。今でこそガリバフは国を代表しているように見えるが、実のところ彼は2005年と13年、17年、24年と4回もイランの大統領選に出馬し、いずれも落選に終わっている。最初は同じ保守派の候補に競り負け、2度目は改革派の候補に敗れ、残りの2回は保守派の支持をまとめ切れなかった。

しかし今度の戦争で、お鉢が回ってきた。イラン指導部の多くが次々と殺害されたおかげで、気が付けば自分が権力の中枢にいた。

改革派とは正反対の人物