200年前のクジラの衝突事故には詳細な記録が

マッコウクジラが強力な頭突きを行う能力を持つことを長く示唆してきた記録は複数存在する。

その最も有名な例の1つは、1820年にクジラの衝突によって沈没した捕鯨船エセックス号だろう。この出来事がハーマン・メルビルの『白鯨』に影響を与えたと言われる。

エセックス号の一等航海士、オーウェン・チェイスは報告の中で次のように記している。「私は振り返り、クジラが真正面約500メートルの位置にいるのを見た。時速90キロでこちらに向かってきており、その様子には十倍の激しい怒りと復讐心が感じられた......尾を絶えず激しく打ちつけるため、クジラの周囲では波しぶきがあらゆる方向に飛び散っていた。頭部は半分ほど水面から出ており、そのまま我々に突進してきて、再び船に衝突した」

エセックス号の他にも、アン・アレクサンダー号やキャスリーン号などもクジラの体当たりで沈没したと報告されている。

研究者らは、この行動の本当の意味を理解するにはさらなる観察が必要だと指摘する。観察自体は、ドローン技術の進歩によって今後容易になっていくと期待されている。

バーレムは「水面近くでの行動を観察し記録するための俯瞰的視点は、ドローン技術が野生生物学の研究を変革している一例にすぎない」と述べた。

「今後、これまで見られなかった行動が明らかになる可能性を考えると非常にわくわくする。頭突きの観察件数が増えれば、この行動がどのような機能を果たしているのかを解明する手がかりになるだろう。同様の映像を持っている人がいれば、ぜひ連絡をいただきたい」

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