この構造が、今回のイラン戦争で見られるパラドックスを説明する。恐怖そのものは現実に存在するが、それは金の上昇ではなく、ドル高と債券利回りの上昇として現れている。
イラン戦争開始以降の金の下落は、投資家が安全性とアクセスのしやすさから現金、特にドルを優先していることを反映している。
このパターンは過去の危機でも見られ、当初は金が下落し、代わりにドルが選好されることが多かった。
金には利息が付かない
また、金は利息を生まない。この単純な事実は、債券利回りが上昇する局面で重要になる。
イラン戦争は原油価格を押し上げ、インフレが想定より長引くとの懸念を再燃させている。インフレが続くと見られる場合、中央銀行は金利水準を維持するか、少なくとも利下げを先送りする可能性が強い。
これは金にとって不利な環境だ。金利が上昇すれば、利息を生む米国債や預金の魅力が、無利息の金よりも高まる。
インフレが金価格を押し上げるとする見方には、こうした誤解がある。実際には、金はインフレそのものよりも、インフレ調整後の実質利回りの動きに連動する傾向が強い。
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