高市早苗首相は19日、米国のトランプ大統領とワシントンで会談する。両首脳は同日、ワーキングランチと夕食会をともにする予定だ。日本政府関係者は「トランプ氏が1日⁠に2回外国首脳と食事をするのは異例の厚遇だ」と喜ぶが、内実は厳しい。混迷を極める中東情勢を受け、トランプ氏は日本を含む同盟国・友好国にホルムズ海峡の安全確保への関与を求める一方、日本の法律では「関与」に限界があるからだ。高市氏が置かれた状況と日⁠本の採るべき選択について、上智大学の前嶋和弘教授(米国政治)に話を聞いた。

前嶋氏は2月末のイラン攻撃で、今回の日米首脳会⁠談の意義が大きく変わったと指摘する。「本来、日本にとっては米中首脳会談を前に『台湾のことで中国と変な妥協をしないように』と米国にくさびを打つことが重要な目的」だったが、「同盟国である米国による国際法違反の戦争にどこまで関わるのか、の選択を迫られる事態になった」と見る。

前嶋氏は「日本が米国に加担した場合、イラ⁠ンから攻撃され、自衛官が亡くなる可能性すらある。高市氏は違法な戦争に加担し、日本人の血を流したことになる。そんなこと⁠ができる⁠のか」とも疑問を呈した。

さらに、トランプ米政権が新たな関税の導入に向けて日本を含む主要貿易相手国・地域に対し、通商法301条に基づく不公正な貿易慣行の調査を開始すると発表したことを念頭に、「首脳会談は関税が不当に高くならないように求める機会でもあった」と指摘。その点も当初の目算が「大きく変わってしまった」と述べた。

一方、高市氏がト⁠ランプ氏からの要請を断った場合、「関税の上乗せにとどまらず、日米同盟を破棄するとまで言い出しかねない」と指摘。トランプ氏がホルムズ海峡の安全確保を目的に「有志連合」への参加を主要国に呼び掛けた直後のタイミングである点にも触れ、「日本を『有志連合』に入れることができれば他国へのプレッシャーになる。逆に日本が断ればこんな目に遭うと見せしめにもできる」と語った上で、「高市氏にとって非常に難しい会談になるだろう」と予測した。

では、高市氏はト⁠ランプ氏にどう向き合うべきか。前嶋氏は「トランプ氏に提示できる『グレーゾーン』をできる限り多く用意することに加え、イランにうまく接触して輸送の安全を確保することも必要だ。中国との関係悪化が日本の立場をより危うくしていることを考えれば、対中関係の改善も必要だろう」と述べた。「玉虫色の姿勢でどうトランプ氏に従ったように見せるかが問われている」

(聞き手・鬼原民幸)



[ロイター]
トムソンロイター・ジャパン
Copyright (C) 2026トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます
スパイス企業の新戦略...エスビー食品が挑む「食のアップサイクル」とは?
スパイス企業の新戦略...エスビー食品が挑む「食のアップサイクル」とは?
PR
ニューズウィーク日本版 台湾有事の新シナリオ
2026年4月21号(4月14日発売)は「台湾有事の新シナリオ」特集。

米・イラン戦争で変わる地域紛争の「大前提」/石油危機を恐れるべき理由

※バックナンバーが読み放題となる 定期購読はこちら
※画像をクリックするとアマゾンに飛びます