「マンションの所有権は、日本に行く入場券のようなもの」

印象的な取材相手の一人が、著者が上海で会ったドンという名の不動産コンサルタントだ。大学生のとき千葉に留学した経験を持つという40代後半くらいの彼は、流暢な日本語でこう語ったという。


「中国人は、もはや日本のマンションを買う買わない、という次元の話はしていません。買うのは当然のことで、わざわざ議論するようなことではないからです。それよりも買った後の子供の教育、病院や主治医をどうするかという話をしています」(132ページより)

日本の不動産購入は、なんら特別なことではなくなっているわけだ。上海のマンション1部屋と同じ価格で、東京なら2部屋、福岡なら3部屋買えるそうなので、「では日本で」となるのは当然とも言える。

もちろんアメリカも魅力的ではあるが、高齢の親になにかあったときのことを考えると、すぐ帰れる距離の日本のほうがいい。それにマンションを持っていれば、いちいちホテルを予約しなくても気軽に行き来ができる。

「マンションの所有権は、日本に行く入場券のようなもの」という表現からも伺えるとおり、日本にマンションを持つことはきわめて合理的な発想なのかもしれない。


 ドン氏は、6年くらい前に中国で流行した「内巻(ネイジュアン)」という言葉について話した。
 競争が激化する中で死ぬほど努力しているのに、誰も豊かさや成果を感じられない「消耗戦」の状態を意味する。就職氷河期世代の私は、自分もかつて経験した「ワーキング・プア」を思い出した。(132ページより)

14億人が住む中国で、生まれたときから生存競争が始まるのは有名な話だ。朝早くから夜遅くまで勉強していい大学を目指すが、大学を出ても就職できる保証はない。

「観光、風俗、ギャンブル。大阪には三つが揃っています」