昔から観光地だった王家の谷

この落書きが残された場所は、エジプト南部のルクソール近郊にある王家の谷。

新王国時代(紀元前16〜11世紀)にファラオたちの墓が築かれた場所として知られるが、研究者らによると、ローマ帝国時代にはすでに古代遺跡として認識されていた。

GBニュースなどによると、1926年にはエジプト学者ジュール・バイエによって約2000点の落書きが記録され、その多くがギリシャ語やラテン語で書かれていたことから、当時すでに観光地のような存在であったと考えられてきたという。ローザンヌ大学のインゴ・シュトラウフ教授も「王家の谷は、今日と同じように観光地だった」と指摘している。

落書きの中にインド系言語によるものが含まれていることが確認されたことで、インドから地中海世界へとつながる広域な交易や移動の存在が改めて浮かび上がった。

GBニュースによると、独ミュンスター大学のアレクサンドラ・フォン・リーベン教授(エジプト学)は、インド系言語の落書きについて、「エジプトにインド人がいたというだけでなく、インド人がエジプトの文化に積極的に関心を持っていたことを証明している」と指摘する。

「研究が進めば、他のエジプトの遺跡からも、インド人による落書きが発見される可能性がある」

大昔の「観光客」が残した小さな落書きが、古代ユーラシアの広域交流を語る重要な史料となっている。

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