<スピルバーグ監督作『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』は、ベトナム戦争期のワシントン・ポスト社主キャサリン・グラハムと編集主幹ベン・ブラッドレーを描く物語。その前日譚ともいえる「ブラッドレー起用」までの経緯をグラハムの自伝から抜粋(第2回)>
ベトナム戦争の「暗部」にまつわる機密文書をワシントン・ポストがどう報じ、米政府と戦っていったのか。スピルバーグの映画では、主役の2人、キャサリン・グラハムをメリル・ストリープが、編集主幹ベン・ブラッドレーをトム・ハンクスが演じる。
※第1回:天皇と謁見した女性経営者グラハム(ペンタゴン・ペーパーズ前日譚)
この訪問は一九六五年の二月のことで、この頃は米国の軍事顧問の数は増加していたものの、総数はまだ比較的少なかった。米国はまだ直接介入していなかったが、ニューズウィークは二人ないし三人の特派員を派遣しており、ポストも一人を送り込んでいた。到着の翌日、担当士官から説明を受けた後で、私たちはウェストモーランド将軍夫妻と昼食をともにする機会を得た。この旅行の間中、私は家族への手紙を書くことで観察や経験をまとめることにしていた。ウェストモーランド将軍について、次のように記している。「彼は無口な軍人タイプの典型のようです。もし非常に明敏な面があるとしたら、それは技術屋としてでしょう。なぜなら、彼は会話によって意志を明らかにすることをしませんし、堅苦しく、不安げで、むしろ怯えているようにも見えました」
オズと私、ボブ・マッケーブ、そしてニューズウィークのビル・トゥーイの四人は、昼食の後、そろって小さなヘリコプターに乗り込み、二五マイルほど離れた基地に向けて飛び立つことになった。この基地は、カンボジア国境地帯に近い「ブラック・レディ山」の頂上にあり、ベトコンによって完全支配された地域の外縁部に位置していたが、上空を飛行する軍用航空機との無線連絡のため、米軍によって使用が続けられていたのである。