今回、始まったMe Tooの動きは、突然発生したものなのか? 実は以前から女性の人権に対する動きは高まっていた。特に、2年前に江南駅で起こった女性殺傷事件以降、「ヨソンヒョモ(=女性嫌悪)」という言葉が定着。当時、犯人の男が「女性なら誰でもよかった」と発言したことに多くの女性が衝撃を受けた。また、2017年8月には、匿名女優がキム・ギドク監督に作品内で暴行・セクハラを受けたと告訴し、その後韓国芸能界では、撮影現場での過激すぎる演出に異議を訴える女優が続々と登場することとなった。

■キム・ギドク監督を告発する団体による記者会見を伝えるニュース YTN / YouTube

このような動きからフェミニズムの意識が韓国女性の中でだんだんと高まっていったところに今回のMe Too運動である。今訴えている女性たちも最近被害にあったわけではなく、数年〜十数年以上前のセクハラ事件を告発している。今まで泣き寝入りしていた女性たちが、この大きな流れに乗って背中を押され、ついに声を上げられるようになったのだ。

何か社会的な問題や関心事が発生した時、対応が早いのが韓国の特徴である。ムン・ジェイン大統領は今回のMe Too運動に対し、2月26日「積極的に支持をする」と発表。各省に「ジェンダー差別根絶対策を立てること」「被害者からの告訴があった場合、刑事告訴意思を確認し、親告罪条項が削除された 2013年6月以後の事件は被害者告訴がなくても積極的に捜査すること」など具体的な指示を出した。

また、翌27日には「小・中・高等学校でのフェミニズム教育の義務化」を発表した。韓国政府が毎日行っている生放送「11時50分青瓦台です」では、ユン・ヨンチャン国民疎通主席が出演、「フェミニズム教育が必要だと請願してくださった国民の皆さん、一気に多くのことを解決することはできないが、政府が着実に改善を進めていくという点を理解していただきたい」と伝えた。

あの"メガネ先輩"の記事も巻き込まれ......

日々いたるところでMe Tooの告発が出てくる韓国では、ジェンダーに関する問題については過剰とも言えるピリピリ感が漂っていて、平昌オリンピックについてのメディアの取り上げ方にも火の粉が降りかかった。問題になったのは意外にもハフポスト日本版が、今大会で注目を集めたカーリング女子韓国代表チームを取り上げた記事だ。メガネ先輩ことキム・ウンジョン選手が、準決勝の日本戦に勝利し涙する写真とともに、「冷静な選手から、一人の女性に戻った瞬間」という文章で掲載した。この記事に対して、同じハフポストの韓国版ハフポストコリアが「性差別的だ」と抗議。日本版が記事を書き換えることになった。言い回しだけの問題としても性別を強調することで女性差別と受け取られかねない書き方をやめようという配慮が伺える。

ハフポストコリアがハフポスト日本版への抗議の経緯を説明したツイート
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筆者自身も、今思えば#MeTooと告発する被害者だったと思われるセクハラを受けたことがある。もう10年以上も前、2006年の話だが、ある映画作品の撮影現場で仕事をしていた。ある日雨で撮影がキャンセルになり、出演している中年俳優にランチに誘われたため数人で高級日本料理店に行った。雨が強くなったので駅まで送ってくれるというその俳優の車に乗ったものの、その後車は駅に向かわずラブホテルの駐車場に入ったのだ。すぐに車から降りて駐車場から逃げたが、彼は後を追いかけてきて10万ウォンの小切手を握らされた。

その後も撮影は残っており、そのたびに現場で顔を合わさないように、絶対に二人きりにならないように気を使ったのは言うまでもない。その時、車の中でその俳優が言った言葉は衝撃的でよく覚えている。「このままホテルに行ったら外国人タレントとしてデビューさせることもできる......」映画出演に全く興味がなかったし、そもそも女優やタレントになるために韓国まで来て頑張っていたわけでもないのに、そう言えば口説き落とせると思われた自分が悔しかった。また、撮影現場では「韓国映画は男性主演の映画が多い。女性の出番が少ないから残り少ない配役を求めて、出演するためなら女優は何でもする」と、枕営業を仄めかす言葉を聞いたこともあった。

海外では映画祭などでMe Tooを支持するブラックドレスを着る運動が起こっているが、今年、釜山国際映画祭など韓国の映画祭のレッドカーペットでもブラックドレスは見られるのだろうか? 

熱しやすく冷めやすい韓国人気質ではあるが、この運動が続くことで、セクハラ被害を訴えることが可能な社会になり、また多くの女性や男性の被害者が少しでも減るようになればと思う。

そしてこれを機に韓国、そして日本を含めたアジアのエンターテインメント業界が意識改革を進めることを強く望んでやまない。