"塊肉を回しながら焼く機械"は、「新しい何か」になりうるのではないか。これをなんとか実現できないか――商品企画チームは走り出した。

最初に行ったのが"回すこと"の必然性の検証だった。見た目の派手さのためだけに回すのであれば、そんな商品が成功するはずがない。だが、回しながらゆっくり焼いていくと確かに肉はおいしく調理できた。ただし、回転して肉を焼くだけの家電ならマニア向けで終わってしまう。

ビジネスとして成り立たせるには、日常的に使ってもらえる商品に仕上げる必要があった。

回転して焼く「グリル」はもちろん、「オーブン」「燻製」「トースター」の4つの機能を高い次元で成り立たせること。これが正式な商品化への大きなハードルとなった。

実はとりわけ難しかったのがトースター機能だという。なぜか。

「トースターには短期間で表面をパリッと焼くことが求められるので、多くのトースターの庫内は熱の反射がしやすい材質で色も銀色が使われます。他の3機能、とりわけロティサリーグリルは脂が飛び散るので掃除しやすい加工をする必要があり、その性質はトースターに求められるものと正反対なのです」(石毛氏)

そうした相反する命題に対し、ヒーターの配置や出力制御プログラムの工夫でトースターとしても満足できる焼き上がりを実現することができた。

トースト機能のほか、主に技術面からより多くの消費者に受け入れられる機能を実現できるメドがつき、正式に商品化のゴーサインが出たのは2016年夏だった。

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焼き上がった肉。肉汁が落ち着くまで待つのが基本。撮影のため肉汁が溢れるタイミングでナイフを入れたが十分においしかった(記者撮影)

独自の回転機構を開発

そこからも一本道だったわけではない。

最も苦労したのは、最大の売りである回転機構の実現だ。串を刺す方式は使いやすいが、肉の内部に菌が入る衛生上のリスクから断念した。ならば、肉を挟めばいい。挟むなら上下で挟むか、左右で挟むか。いろんなアイデアを試した結果、いちばん確実に回すためにカゴに入れてカゴごと回す現在の方式に行き着いた。

そのうえで、誰もが使いやすい構造を探し求めた。操作性を考えれば、カゴへの食材の出し入れは庫外で行う必要がある。そのためにはカゴと回転軸を簡単かつ確実に脱着できなければいけない。

カゴと回転軸のそれぞれに5枚の羽のついたギアがかみ合う、現在の構造にたどり着くまで羽根の数や形状などで試行錯誤を繰り返した。

金型発注につながる最終図面までに要した試作品の数は通常の調理家電の倍以上。「かなりの難産。血と汗と涙の末にようやくできた。血は流していないけど、肉は何キロ食べたかわからない」(石毛氏)。

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5枚の羽のついたギア。これでカゴを簡単に取り外しができる(記者撮影)
採算面のハードルどう越えた