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日光をふんだんに採り入れることのできる1階の食堂。ランチタイムには大勢の社員で賑わい、コミュニケーションを楽しんでいる。
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(左)コミュニケーション・アドバイザーのピーター・ヴァン・ボスショーテン。(右上)事務棟1階の執務スペース。PR関連部署の社員が働き、席は固定席になっている。事業として扱っているのはエネルギーであるが、アムステルダムというコミュニティに対してフレンドリーな存在でいたいという願いから、透明感のある設計にした。(右下)ライブラリースペース。10年以上先の長いスパンでのリサーチにも力を入れるシェルならではのスペースだ。まるで図書館のような蔵書の数々である。

 現状、プラント始動時に全てを正常に機能させるため10年単位の研究開発を要している。この時間を短縮するために、シェルは「つながり」、すなわち共同作業に活路を見出したのである。何より重要だった課題は、可能性のないアイデアを早い段階で見極めること。「早い段階での失敗」がキーになる。同時に1つひとつのアイデアにかける時間を可能な限り短縮すること。他者と関わる必然はここに生じた。

「同じ建物内に1000人以上の従業員が働いていることで、リサーチレベルでのアイデアの交換も可能になり、全てがフレキシブルになりました」

 かくして、より多くのアイデアを検討し、より多くの「小さな」失敗を積み重ねていく態勢が整うわけだ。イノベーションは失敗の繰り返しから偶発的に生まれるもの。ならばテクノロジーセンターは、失敗そのものを減らすことより、価値ある失敗を増やすことに向かうべき、ということだ。

「社会に対して開かれた会社」を表現する建物

 もっとも、ロイヤルダッチシェルが追求するコンテクストは社内に限られたものではない。

 例えば、シェル・テクノロジーセンター・アムステルダムを訪れた者は皆すぐに、その空間の「明るさ」に気がつくだろう。ガラス張りの外観で、自然光がふんだんに取り込まれる健康的なオフィス。従業員の労働環境を配慮したものであるには違いない。しかし、これは同時に「見せる」ためのデザインでもあるのだという。同社広報担当のイミティアス・ラムジャンベグ氏が補足する。

「シェル・テクノロジーセンター・アムステルダムが完成した2009年当時、人々の環境意識が高まっていました。私たちは、アムステルダムのコミュニティに対してフレンドリーな存在でありたかった。社会に対して開かれた会社、それを表現するためのデザインなんです」

 アムステルダムに研究施設を保つという決断も社外とのつながりを強く意識したものだ。オランダの首都であり、世界中から才能が集まる場所。ここには土地の魅力がある。

「才能ある人々が、積極的に働きたくなる環境をつくりたかったんです。オープンなカルチャーがあり、インスピレーションがかき立てられる環境をね。そうして社内のみならず、社外の人々ともつながっていく。ロイヤルダッチシェルの社員はみな優秀ですが、エネルギーを巡る諸問題は、社外との協業なくして解決できるものではありませんから」

創業:1907年

売上高:約4,569億ドル(2014)

純利益:約163億ドル(2013)

従業員数:約92,000人(2014)
http://www.shell.com

コンサルティング(ワークスタイル):YNNO

インテリア設計:Fokkema & Partners Architects

建築設計:Arcadis

WORKSIGHT 07(2015.4)より

text: Yusuke Higashi

photo: Takeshi Miyamoto

※当記事はWORKSIGHTの提供記事です
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