テントの方へ

 「テントの方へ行ってみますか? 彼らに話は聞けませんが。ただ、診療所に来る患者さんに同意を得てあとでインタビューを受けてもらうことは可能ですし」

 クリスティーナさんがそう言った。

 施設の裏に倉庫があり、そこを回り込むと暗い色調のテントが連なっていた。

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遊ぶ子供たち

 もともと俺たちが車で通った時の道路があり、その向こうの高架の下にもテントは並んでいた。

 低いテントの群れの横にトイレらしきプレハブが並び、またしばらくテントが続くと今度はシャワーを浴びるためのボックスのようなものが建てられていた。

 暑いさかりでもあり、生活している人々はほとんど外にいなかった。いるとしたら子供たちにホースで水をかけている母親と、黙ってバスケットボールをついている男の子たちくらいのものだった。

 高架の壁にスプレーで大きくこう書かれていた。


NO BORDERS

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ダイレクトなグラフィティ

その言葉は受け入れる側の歓迎、あるいは難民側からの強いメッセージにも見えた。

 俺たちは常に境界を作っている。国境を、心理の境を、宗教や人種の壁を。

 それが誰かの苦境を生み出しているのだ。

バグダッドの紳士