何世紀も前、インドの王子たちはメダック県の水清きKazhipally湖で沐浴をしたものだ。しかし今日、酷暑のインド南部で暮らす最も貧しい村人でさえ、荒れ果てた湖岸と泡立つ水を指さし、「あのあたりには近づかないようにしている」と言う。

ハイテク産業の拠点ハイデラバードから車ですぐの距離にある南東部テランガナ州メダック県は、インドの抗生物質生産の中心地である。人口約250万人のメダック県は、低価格医薬品において、米国を含めた大半の世界市場をターゲットとする世界最大級の供給場所だ。

だが地域の活動家や研究者、一部の製薬会社職員は、300社以上もの製薬会社の存在と、監督当局の怠慢、不適切な排水処理が重なったことで、湖と河川は抗生物質に汚染され、薬剤耐性菌の巨大な「培養皿」になってしまったと指摘する。

活動家のキシャン・ラオ氏は、「薬剤耐性を備えたバクテリアがここで育ち、世界中に影響を及ぼすかもしれない」と警鐘を鳴らす。彼は、多くの製薬会社が拠点を構えるメダック県内の工業地域パタンチェルーで、医師として20年以上にわたって働いている。

メダック県には、インドの製薬大手ドクターレディーズ・ラボラトリーズ<REDY.NS>、オーロビンド・ファーマ<ARBN.NS>、ヘテロ・ドラッグスや、米後発医薬品大手マイラン<MYL.O>などが進出しているが、いずれも、現地の環境規則を遵守しており、廃液を水路に流すことはないと話している。

この問題の大きさについて、インド政府と州政府の見解は異なっている。

インド政府の中央汚染管理委員会(PCB)がメダック県パタンチェルー地域を「深刻な汚染」に分類する一方、州政府のPCBは自身のモニタリングによれば、状況は改善されていると述べている。

最後の手段とされていた抗生物質でさえ効果がない感染症が昨年、出現したことにより、薬が効かない「薬剤耐性菌」の増大は、現代医学にとってますます大きな脅威となっている。

米国だけでも、抗生物質への耐性を備えたバクテリアを原因とする深刻な感染症は年間で200万件、死亡数は2万3000件に達している、と医療当局者は推計する。