例えばアマンダの豪邸にある布張り家具の深い赤と、モードの質素なアパートの色あせたベージュの対比。そして物語は容赦ないペースで進み、観客に次々と不気味な映像を突き付ける。

このあたりがサイコホラーの真骨頂。苦悩ゆえ、あるいはエクスタシーゆえ、あるいはその両方が交じり合った状態で、モードが大きく口を開く場面がある。それは人間の解剖学的な限界を少しだけ超えた開き方で、これが最高に怖いし、切ない。

なお『セイント・モード』はアメリカで昨年春に劇場公開の予定だったが、コロナ禍により1年ほど延期された。それでも私は本作を「2020年のトップ10」の1本に入れておいた。いつか必ず、劇場でこの傑作にお目にかかれる日が来ると信じていたから。

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SAINT MAUD

『セイント・モード/狂信』

監督╱ローズ・グラス

主演╱モーフィッド・クラーク、ジェニファー・イーリー

日本公開(デジタル配信)は10月6日

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