シアトル在住のハナ・リドマン(43)は既婚で2人の子供がいる。昨春のロックダウンの際、自ら設立した会社を去った。親の託児所探しを支援するスタートアップ企業だったが、託児所や学校の閉鎖でビジネスが立ち行かなくなった。

その後、何とか支援活動のNPOで在宅のフルタイムの仕事を見つけた。給与は年間約8万ドルだったが数カ月で離職。4歳と7歳の子供が家にいて週50~60時間働くのは無理だった。「挫折感がすごかった」

自分は恵まれているほうだということは分かっている。テクノロジー業界で働く夫の収入は、彼女が支援活動のNPOで稼げる額をはるかに上回っていた。彼女がストレスを感じているのは金銭的なことではなく、チャンスと勢いを失ったことだ。

例年どおり確定申告書類の準備をしていた際、20年度の自分の収入がいかに少ないかが一目瞭然で、泣いた。「私にどんなダメージを与えたか分からない」とリドマンは言う。

「同業の女性の多くが幼い子供を持つ母親だ。私たちはみんな仕事を減らすか何かを犠牲にしなければならなかった。自分たちがこの先どうなるのか見当もつかない」

働く女性の長期的損失(精神的にも経済的にも)を評価する際、大きな不確定要素の1つは、雇う側が女性たちの抱える事情に配慮するかどうかだ。

雇用主や政府の支援も不可欠

確かに女性がキャリアを中断すれば普通は不利になる。だが今回は、前例のないパンデミックで選択肢はほとんどなく、非常に多くの女性が離職せざるを得なかった。

「分別のある雇用主なら、パンデミックの影響で1年離職したからといって給与を減らすのは酷だと考える可能性はある」が、それを期待するのは得策ではないとマドウィッツは言う。

特に母親たちはフルタイムの仕事探しに苦戦しそうだ。20年秋に実施された調査では、パンデミック中に子供の世話をするために離職した母親たちの40%が求職中だった。現在、求人は増加傾向にあるが、母親たちの状況は依然として厳しい。

「子供の世話をするために融通の利くポストを見つけるのは大変」だとブルッキングス研究所の経済研究フェロー、ローレン・バウアーは指摘する。

米政府が4月に発表した教育支援策の中の保育施設拡充が、流れを変えるかもしれない。コロンビア大学とNWLCの試算では、誰もが保育施設を利用できれば女性130万人の生涯所得の総額が1300億ドル増えるという。

女性が低賃金の仕事に集中していることを考えれば、連邦最低賃金を時給15ドルに引き上げることも、失業した多くの女性の生涯所得を確実に上げるのに役立つ可能性がある。

もちろん、未来は雇用主や政府だけに懸かっているわけではない。パンデミックも問題だ。多くの女性は、学校が完全に再開し、ワクチンの接種が進み、生活がある程度正常に戻らなければ仕事に復帰できない。

マドウィッツも同じ意見だ。「パンデミックが終わればいいが」

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