<ニューヨークにさまざまな日本食が進出しているが、手作り納豆からNY初の地酒まで、その傾向はさらに深く広くなっている......>
アメリカ・ニューヨークではここ10年ほど、ユニクロやダイソー、コスメ専門店など日本の小売業などの出店が相次いでいるが、中でも、飲食業界の進出は特に顕著だ。
最近オープンして大きな話題となっている"奇跡のパンケーキ"「Flipper's」から、すでに安定した評価の一風堂、一蘭、大戸屋、田舎家、牛角、つるとんたん、銀座おのでら、さらには一保堂茶舗、いきなりステーキ、屯ちん、など、日本から有名店が続々と進出している。
寿司屋やラーメン屋はそこかしこにあるし、居酒屋、蕎麦、うどん、すき焼き、お好み焼き、たこ焼き、鯛焼き、カレー、しゃぶしゃぶ... かき氷、とより細分化されてきている。
「獺祭」の新酒蔵がニューヨークにオープン予定

日本酒も、おしゃれなアルコールとして、すっかりニューヨーカーの生活に定着している。10月3日、日本酒「獺祭」のパーティー(旭酒造)がマンハッタンで開催された。獺祭の蔵元の旭酒造が、2020年冬にニューヨーク州ハイドパークに獺祭の酒蔵(醸造所)と、「Dassai Blue」という新ラインの日本酒を作るという事業計画がニューヨークの日本酒ファンに発表された。
「Dassai Blue」は、南部アーカンソー州で栽培された山田錦の米と、ニューヨークの水を使って作られるという。「ニューヨークの土地や食文化に合った最高の日本酒を作ります!」と旭酒造の桜井一宏社長は語った。
手作り納豆やニューヨーク初の酒蔵も
日本に古くからある伝統的なものを、現地の人の手により、現地で採れた素材を使って作られ、現地の人に消費される。旭酒造がチャレンジしようとしていることは、ニューヨークにおける食の「ジャパニフィケーション(日本化)」とも言える潮流だ。
今や日本酒や納豆なども、ニューヨークで作られている。2018年1月には、ニューヨーク・ブルックリン地区に、市内初の酒蔵「Brooklyn Kura」(ブルックリン・クラ)がオープンし、人々を驚かせた。
日本旅でたまたま出会ったアメリカ人の2人の若者は、そこで日本酒のおいしさに目覚め、自ら日本酒造りをするまでに辿り着いた。発酵から酒瓶詰めまで、すべての工程をブルックリンの自身の酒蔵で行なっている。
彼らが作る日本酒は純米吟醸生原酒がメインで、程よいドライさと甘さが混じり合い、「この味がアメリカで実現できるとは」と驚くほどの出来栄えだ。酒バーを備えたテイスティングルームは、いつも現地のお客さんで賑わいを見せる。

また新鮮な納豆も、同じくブルックリン地区で手作りで少量生産されている。フィラデルフィア出身の日系2世、アン・ヨネタニ氏がNYrture New York Natto (ヌーチャー・ ニューヨーク納豆)を創業したのは、2016年のこと。彼女も以前は微生物学が専門の化学者だった。
日本人の両親の影響でもともと納豆が大好きだったが、当地で新鮮で美味しい納豆がないため「自分で作ってみよう」と思ったのが、納豆作りのきっかけになった。

原材料の豆は、ノースダコタ州産の遺伝子組み換えされていないものを使っているという。食べてみると市販品と全く別物であることがわかる。特に日系スーパーで販売されている納豆は、冷凍保存されて空輸されてきたものなので、ヌーチャー・ ニューヨーク納豆は味が美味しいのはもちろんのこと、香りや噛みごたえ、粘りなどがまったく違う。そして、顧客の90%は非日本人だという。

このようにないものがないほど日本食が進出しているニューヨークの飲食事情。さらにまだ「ないもの」といえば......日本の地方料理ぐらいか。博多料理のもつ鍋や豚足の店、京都のおばんざいなどはあるが、秋田のしょっつる鍋専門店や北海道のジンギスカン専門店、広島風お好み焼き店などの郷土料理店は、まだ聞いたことがない。もし上陸すれば「こんな日本食初めて!」と、驚かれること必至だ。日本食は、これまでとは違う形で日本のイメージをニューヨーカーの生活の中に確実に浸透させている。