のどかなる折こそなけれ花を思ふ心のうちに風はふかねど

(『続後拾遺集』)

【現代語訳】花を思う心は、落ち着く時がない。心の中は、現実の桜の花と違って風が吹くことはないのに

これは平安時代の和歌の古典的な詠み方で、第33番の紀友則の歌に非常に近い。しかしこの歌はさらにひとひねりして、心の中に吹く風にまで触れているのが趣深い。

ほんの数首を見るだけでも、和泉式部がとても独創的で、深い感情を美しく表現した歌を多く詠んだことがわかる。

紹介した歌はいずれも、『百人一首』の歌よりもさらに素晴らしいとさえ感じた。どの歌も詩的で、現代に通じる魅力があり、和泉式部という歌人の非凡さを感じさせてくれる。

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ピーター・J・マクミラン(Peter MacMillan)

アイルランド生まれ。アイルランド国立大学卒業後渡米し博士号を取得。現在は東京大学非常勤講師、相模女子大学客員教授、武蔵野大学客員教授を務める。2023年、JICA初の文化担当講師に就任。2008年に英訳『百人一首』を出版し、日米で翻訳賞を受賞。その他日本での著書に、英訳『伊勢物語』、英訳『百人一首(新訳)』、『英語で味わう万葉集』、『謎とき百人一首──和歌から見える日本文化のふしぎ』、『英語で古典 和歌からはじまる大人の教養』、『シン・百人一首 現代に置き換える超時空訳』など多数。NHK WORLD「Magical Japanese」、KBS京都「さらピン!キョウト」に出演している。2024年、NHK「100分de名著」で百人一首の指南役を務める。その他番組に多数出演。同年、外務大臣表彰受賞。また秋の叙勲にて旭日小綬章受章。

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 『謎とき百人一首──和歌から見える日本文化のふしぎ
  ピーター・J・マクミラン[著]
  新潮社[刊]

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