[ワシントン 13日 ロイター] - トランプ前大統領のフロリダ州の邸宅兼高級リゾート「マールアラーゴ」を米連邦捜査局(FBI)が家宅捜査し、政府の機密文書が押収された。そのことについて安全保障の専門家からは、トランプ氏とマールアラーゴにまつわる安全保障上のリスクが、改めて鮮明になったとの声が出ている。
トランプ氏には、他国のためにスパイ活動をしたり、米国の防衛関連情報を不適切に扱うことを禁じたスパイ活動法違反の疑いが持たれている。
トランプ氏は大統領時代、機密情報を無造作に共有することがあった。大統領就任早々、執務室で過激派組織・イスラム国掃討作戦計画に関する高度な機密情報をロシア外相に自発的に渡したとされる。
今回の家宅捜査で、米国の機密情報が流出する重大なリスクが、かつて「冬のホワイトハウス」と呼ばれ、富裕層のパーティーが開かれる開放的なリゾート施設にあったことが明らかになった。
シークレットサービスによると、トランプ氏が大統領だったとき、マールアラーゴを訪れる権利を誰に与えるかについて、シークレットサービスは関与しなかった。ただ、来訪者には危険物を持っていないかスクリーニング検査を実施し、大統領や他の警護対象者に接触しそうな来訪者には追加の審査を実施していた。
元司法省職員のメアリー・マッコード氏は、司法省の捜索決定が国家安全保障上の懸念を明らかにしたと指摘。
「(司法省は)機密資料を保護された場所に戻すことが、明らかに非常に重大なことだと考えた。マールアラーゴ、そこにいる海外からの訪問者や外国政府・機関と関係があるとみられる人々のことを考えると、不適切な保管場所に高度な機密文書を保持することが国家安全保障上の大きな脅威を生む」と述べた。
トランプ氏は、自身のソーシャルメディアで、記録は「全て機密指定解除」されており「安全な保管場所」に置かれていたと主張している。
しかし、マッコード氏は「彼が退任前に、一つ一つ意識的に機密指定を解除する決定を下したというもっともな議論」は見られなかったと述べるとともに、退任後は機密指定を解除する権限がないと指摘した。
FBIの押収物は複数セットの文書、数十箱の量となった。米国の防衛に関する情報や「フランス大統領」に関する物もあり「高度な機密情報を慎重に扱うには悪夢のような環境。まさに悪夢だ」と元情報機関部員は語った。
<安倍首相訪問時に脆弱性露呈>
司法省は、押収した文書や写真がどこにどのように保管されていたのか、明らかにしていない。ただ、マールアラーゴの脆弱性は周知の事実だった。
代表的な事例は2017年、安倍晋三首相(当時)を迎えたときだ。ツイッターに投稿された写真では、屋外のパティオ席でトランプ氏と安倍氏が肩を寄せ合い、近くには客が歩いたり聞き耳を立てたり写真撮影をしている様子が写っている。
この「夕食会」は、北朝鮮のミサイル発射実験によって中断された。トランプ、安倍両氏がミサイル発射を受けた見解を考える間、客は耳を傾けていた。声明を発表した後、トランプ氏はリゾート内で開かれた結婚パーティーに立ち寄った。
国家安全保障分野が専門の弁護士、マーク・ザイド氏は「われわれが目にしたのは、トランプ氏があまりにもセキュリティーに無頓着で米政府以外の人間が観察・撮影できる場所で、戦争の可能性に関する機密会議を開いていたことだ」と述べた。「トランプ氏の発言を記録する装置を持つのは、誰でも簡単に発言内容を記録できた」という。
安倍氏訪問時の大統領報道官、ショーン・スパイサー氏はその後、記者団に、トランプ氏がマールアラーゴの安全な部屋で北朝鮮のミサイル発射について説明を受けたと述べた。
ツイッターにも投稿されたパティオ席でのことについては「そのとき確かに写真が撮られた。そこで何が話されたかと悪意のある憶測が飛び交った。単に報道対応のロジスティックス、どこで開催するかといった話し合いをしただけだ」と釈明した。
2017年4月、シリアのアサド政権の化学兵器使用を受けてシリア空爆を決定したのも、マールアラーゴの安全な部屋だった。そのときは、中国の習近平国家主席が来ていた。
空爆を決断したトランプ氏は夕食会に戻り、チョコレートケーキのデザートを食べながら習氏に空爆の件を伝えた。
2019年、マルウエアが入ったUSBを携えた中国人女性がセキュリティーチェックを通過して規制敷地内に入り、逮捕された。当時の大統領首席補佐官、ジョン・ケリー氏は、マールアラーゴでトランプ氏に接触できる人物を制限する取り組みを開始したが、トランプ氏が協力を拒否したため頓挫した(側近)という。
(Steve Holland記者、Karen Freifel記者)